「月光」は「月給を空っぽにする」という意味
CPIが仮に予測通りの高い水準で推移すると、2007年5月から2008年上半期まで、中国人は少なくとも1年間以上にわたり、高いインフレ圧力の下で生計を立てることになる。こうした背景にあって、家計管理をより正確に行い、生活防衛を図ろうと考える消費者、特に家計管理が不得意な若者、あるいは経験の浅い若者の中から、ネット家計簿という便利なツールを活用しようとする人が増えてくるようになったのである。
中国には、"月光族"という言葉がある。これは、毎月の月収をスッカリ使いきり、貯金などはまるでしないという人々を指す言葉だ。月(給)と光(空っぽにするという意)を掛け合わせた現代的造語だ。
月光族のほとんどは単身の若者であるが、2人の月光族が結婚すれば当然「月光家庭(月光家族)」が形成される。一人っ子政策や経済発展の下でに育ってきた若者、特に「80後」と呼ばれる80年代以降生まれの世代には、計画的な消費や貯金などの観念そのものが希薄で、流行の追っかけやパーティーなど、奔放で自由な支出が多いことが、月光族が生まれてきた重要な原因だと言われている。
責任感が芽生え始めた「月光族」や「月光家庭」
また社会的には、月光族や月光家庭に、育児や両親への扶養義務、健康保険への加入、老後への備えなど、生活防衛上の経済的な準備がないことが多いため、将来には社会全体に重い負担をかけてくるではないかと懸念されている。
だが、その月光族の生活理念にも、最近は変化がみられるという。自分や家族に対する責任感が少しずつ増してきているというのだ。厳しい生存競争や将来に対する不安、親や社会からの教育などが、月光族の生活意識を精神的な側面で変えつつある。
さらに、住宅価格の高騰やCPIの上昇といった現実的な重圧が、彼らの経済的な意識を変えてきている。こうして、多くの月光族が月光族卒業後の生き方を真剣に考えるようになってきたのだ。そこで出てくるのが家計簿、というわけである。だが、筆と紙の家計簿という伝統的な家計管理ツールは、今時の消費者、特に若者にしてみれば、もはや時代遅れのものらしい。そこで、彼らが手にしたのが、インターネット時代に生きる彼らにふさわしい「ネット家計簿」だったのだ。