中小企業間に広がるIT経営デバイド
経済産業省ではこのような状況を踏まえ、中小企業のIT化推進のため「中小企業IT化推進懇談会」などを通して、環境整備策や関係者の連携の方策等を議論してきており、中小企業の多様な課題に対応した「中小企業IT経営ロードマップ」の策定や企業経営者に対する研修、支援体制の強化など、中小企業に対するIT化の支援に取り組んでいる。そして、SaaS(Software as a Service)を、これらの課題を解決し中小企業にとって使いやすい新たなITサービスを普及、促進する有力な手段と考えている。
特に、中小企業の95%を占める従業員数20人以下の企業ではITの導入が遅れており、中堅以上の企業との「IT経営デバイド」が広がっている。このような企業に対してSaaSという形態を利用したIT基盤を整備し、低価格のサービスを提供したい考えだ。
「SaaS向けSLA ガイドライン」を公開
今年の1月には、企業の経営者および情報システム担当者がSaaSを利用するにあたって適切な取引関係を確保し、サービス提供企業とユーザー企業間で合意することが望ましいサービス内容、範囲、品質等に関する保証基準の共通認識である「SaaS 向けSLAガイドライン」を公開した。
この中では、アプリケーションのサービス稼働率は99.9%以上(基幹系)、平均復旧時間は1時間以内(基幹系)、サポートは24時間、365日の電話対応、バックアップデータの保存期間は5年以上(基幹系)、セキュリティとしてSSLやVPNの採用などが盛り込まれている。
利用動向について経済産業省とIPAが調査した結果では、SaaSで利用してみたい分野は、「顧客管理」がトップで、以降「財務会計」「給与管理」「人事管理」「生産管理」と続く。利用料金のイメージについては、業務系分野が平均月額5,500円、その他分野が平均4,700円となっている。
2年後に50万社、その後民間による運用へ
このような状況を踏まえ経済産業省では、従業員数20人以下の小規模企業を対象とした公的ITインフラを整備していく。まず、平成20年度からSaaSプラットフォームの基本検討を開始し、データフォーマット、共通UI部分の標準化などを決定、平成21年度中に50万社を目標にSaaSの本格サービスを提供したい考えだ。具体的には、関係省庁と連携し、財務会計や給与システム等と一体になったオンライン申告、申請サービスを開発、それを低価格で提供することにより、小規模企業におけるIT活用の底上げと経営力強化を図る。そして、平成22年度からは参加企業に無償で払い下げ、民間企業による運用へ切り替える方針だ。