国有企業か国家機関の過半数株保有が事業展開の条件
2007年末、中国の情報通信政策を担う信息産業部と、テレビやラジオ、映画の内容を監督する広播電影電視総局(広電総局)は共同で、「インターネット動画配信サービス管理規定」(以下、動画管理規定)を発表した。同規定は今年1月31日から施行され、この規定によると、動画配信事業をおこなう企業は配信内容を監督する国家または地方政府の機関である広播電影部門が発行する「インターネット動画配信サービス許可証(ライセンス) 」を得なければならない。
この許可証を得るためには、法人の資格を持つ国有の独資(非合弁)企業か、株式の過半数を国家または国家機関が保有する株式会社でなければならず、しかも申請する日までの3年間に違法や規則違反の記録がないことなどが義務付けられている。
こうした規制色の強い管理規定は、発表後たちまちインターネット業界、ベンチャー投資業界内に大波乱を巻き起こした。楽観派、例えば中国の動画配信サイト業界をリードする「土豆網」などは、これを業界再編への好機ととらえている。だが、投資業界の関係者などの悲観派は、国家資本の半数以上が本当に必要なのであれば、投資先企業にとって大変な痛手になると考えている。
飛躍の年を迎えた動画配信業界に思わぬ「冷や水」
あくまで概算だが、2003年から現在まで、中国の動画配信サイト分野へのベンチャー投資は約2億ドル(約200億円)にも達し、P2Pなどの動画配信関連サイトまで加えれば、ベンチャーキャピタルが投入した資金はすでに約20億元(約300億円)に達している。
インターネット業界が無尽蔵に投資資金を飲み込むという意味で「紙幣を燃やす」業界だとすれば、動画配信サイトは同業界の中でも屈指の「燃やし王」だ。動画配信サイト業界の新興企業「優酷網」は昨年11月、3回目となるベンチャー資金、計2,500万ドル(約25億円)を獲得。創業後わずか1年の間に、合計で4,000万ドル(約40億円)の投資資金を得た。優酷網より少し早く名を売った動画配信サイトの土豆網もすでに3度にわたりベンチャー資金を受け入れている。
動画配信サイトへの期待が高まる中、2008年はまさに業界が大きく飛躍しようという時期となるはずだった。こうした期待に胸膨らむ状況にあって突如政府が繰り出した今回の動画管理規定は、国内外で非常な驚きをもって迎えられたのだった。