「64bit対応」と「Hyper-V」

信頼性という特徴は製品の良さを伝えるアピールポイントである一方で、新機能の訴求という面では派手さに欠けて見劣りしてしまう。だがあえてこの地味な部分にフォーカスを当てた点にWindows Server 2008の特徴がある。64bit対応によるメモリ空間の拡張で大幅なシステム全体のスケーラビリティ向上に加え、BitLockerなどのセキュリティ機能搭載でセキュリティや信頼性を強調するWindows Serverの新製品だが、1つ興味深いのは今回のローンチイベントのもう1人の主役であるSQL Server 2008の方だ。前バージョンのSQL Server 2005ほど大きな機能アップデートがないため「地味なマイナーリリース」とも表現されることのある同製品だが、信頼性という点では大きな進化を遂げたようだ。

「われわれのかつての最大のライバルである、"ある"企業の出した広告によれば、その企業の製品は"Unbreakable"だそうだ。だが過去数年間に出したデータベース製品における致命的な脆弱性の数を比較したグラフを参照してほしい。ライバル企業の製品は毎年軒並み2桁の水準で、2006年には100件を超えるデータを示しているのに対し、Microsoftでは2004年以降目立った脆弱性が報告されていない」とBallmer氏は述べ、攻撃的な社風で知られるライバルのOracleを揶揄するコメントを出している。MicrosoftがSQL Serverで達成したことの1つは、こうした地道な信頼性の向上であることを示す好例だといえる。

だが地味な改良ばかりだけではない。Windows Server 2008に限っても、Server CoreやRead-Only Domain Controllerの組み合わせによる展開の柔軟性向上やセキュリティ/パッチ対策の強化も見逃せない。IIS 7.0もWebをベースにシステムを構築する企業にとっては大きなメリットだ。極めつけは仮想化ハイパーバイザの「Hyper-V」で、リリースまでには半年のラグが存在するものの、これを利用したシステム構築やサーバ統合をすでに検討に入っている企業も存在しており、もっとも注目のメジャーアップデート内容といえる。

信頼性の向上したサーバプラットフォーム上で、よりセキュアなシステム構築を実現する。Windows Server 2008では高可用性で強化されたセキュリティ機能に加え、Server CoreとRead-Only Domain Controllerの組み合わせによるシステム展開のバリエーション、そして大幅に機能強化されたIIS 7.0など、目立つ機能こそないものの、インフラとしての信頼性が大きく向上している

Microsoftの製品ポートフォリオに含まれる4つの仮想化戦略分野。特にWindows Server 2008の最大の目玉機能ともいわれるHyper-VではサーバOSが64bit対応したことで、よりシステムのスケーラビリティが向上している

Hyper-V Managerによるリソースの管理画面

「Web開発」と「BI(Business Intelligence)」

デベロッパサイドの話についていえば、すでにVisual Studio 2008がリリースされており、CTPなどを通じて早期から開発環境に触れた開発者も多く、特に多くを語ることはないようだ。Heroes Happen HereでMicrosoftが改めて強調していたのは、Windowsのアプリケーション実行プラットフォームとしての魅力だ。

生産性の高い.NET Frameworkをサポートする点がWindowsの特徴である点は言うまでもないだろう。それに加え、データベースのクエリをアプリケーションコード中に埋め込めるLINQや、すでにWebの標準テクニックとなりつつあるAjaxサポートなど、Webアプリケーション構築を助けるさまざまな試みが行われている。さらにBallmer氏は「.NETとPHPを同時にサポートするのはWindowsの特権だ」と述べ、PHP実行環境としての選択肢も存在する点を強調する。また「Silverlight」も特徴の1つだ。AdobeのFlash/Flex対抗として出された技術だが、実行コードが軽い点とマルチプラットフォームサポートが特徴の1つとなっており、従来のスクリプト言語でカバーできないようなよりインタラクティブな仕掛けをWebページに施せる点では面白い。また年末には次期メジャーアップデートである"Silverlight 2"が登場する見込みだ。

新機能のLINQサポートや従来の.NETサポートに加え、Webで標準的なAjaxやPHPなどのテクニックもサポートし、実行プラットフォームとしての柔軟性が向上している。画面はHeroes Happen Hereでケースデモとして紹介されている「Fourth Coffee」のキャンペーンサイト。Silverlightを使い、JavaScriptだけでは難しいような、よりインタラクティブなサイトを構築している

またMicrosoftが新製品群で強調する点として、BI(Business Intelligence)機能がある。SQL Server 2005で初めて標準機能として搭載されたBIだが、SQL Server 2008ではその内容をより改良し、使い勝手の向上に努めている。例えばOffice製品のExcelとの連携のほか、Dynamics CRMといった新型のビジネスアプリケーションまで、さまざまな関連製品との連携を実現し、ユーザーがより使いやすいスタイルでBIを利用できるよう工夫が凝らされた。画面上のデモではDynamics CRMにVirtual Earthのマップ機能を統合し、Web上のキャンペーンページから機能を呼び出して売り上げパフォーマンスの分析を行う様子が披露された。

いまIT業界の中でBIは最もホットな分野の1つだといえる。MicrosoftではSQL Server 2005からBI機能を標準で基幹製品に導入したが、2008ではよりその機能が洗練されてユーザーの手元に届けられることになる。分析データをExcelのような手慣れたソフトで利用したいというユーザーの要望は多く、Office製品を持つMicrosoftにとってその連携機能の提供は最も得意とするところだろう

Dynamics CRMにVirtual Earthの地図機能を埋め込んで、各店舗のパフォーマンスをマップ化されたインタフェース上で確認するデモ。BIとWebの融合例の1つだ

今回発表された3つの製品の10大機能をハイライト。地味だが、信頼性向上のうえでは大きな進化と呼べる機能追加が見受けられる