新制度の導入に先立ち、日本HPでは1年をかけて全職種350 - 400人を対象としたトライアルを実施したという。さらに、トライアル開始から1カ月後、3カ月後には参加者全員に対してアンケートによるヒアリング調査を行った結果、生産性の向上に最も効果がある在宅勤務の頻度は、週1日もしくは2日という回答が多かったという。「現実的に週3日も4日も在宅勤務というのは難しい。やはり"フェイス・トゥ・フェイス"のコミュニケーションは必要で、週3日から2日に戻したという人もいた。自宅でひとりで仕事ができるのは週1日か2日というのが実態だろう」と松村氏は話す。

こういった制度の導入を考えていても、さまざまな理由があって実施に至らない企業は多いが、松村氏は「最初から完璧な制度を望むのではなく、できる部分から始めることでも十分だと思う。重要なのはそのできる部分から着実に実行していくこと」とアドバイスする。同制度の導入前には他社の人事担当者ともアイディア交換を重ねたという

今回の制度では、在宅勤務の日数は月に数日間というおおまかなガイドラインが設けられている。その理由について松村氏は、「ある程度のガイドラインを設けたほうが社員としても使いやすいはず」と述べ、社員が有効活用できる制度として考慮が重ねられた点が強調された。そのほかセキュリティに関するガイドラインとして、「会社で貸与しているPCを使用する」「鍵のかかる部屋で作業をする」「紙に出力した場合は、廃棄は会社で行う」などの項目も設けられているという。

一方、本制度の導入にあたり、経営側からは特に反対する声は聞かれなかったという。その理由について「場所にとらわれない働き方がすでに社内で定着していたので、反対する理由がなかった」と松村氏は説明する。また「マネージャの中には不安を覚えた管理者がいなかったわけではないが、3カ月後くらいには、就業報告とアウトプットを照らし合わせると、きちんと機能していることがわかるようになってきた」とトライアルの状況を振り返った。