昨年12月にIPTV法が国会を通過
韓国のIPTV市場はまだ初期の段階だが、それだけに顧客を呼び込むコンテンツやサービスが重視されており、コンテンツホルダーとサービス提供事業者との提携の動きが活発に行われる背景となっている。
そうした動きの中、早速収益モデルを構築した企業が出てきた。KTの子会社で、ポータルサイト「Paran」を運営しているKTHだ。同社は比較的早くからIPTV関連事業に携わってきた企業の1つで、映画をはじめとした映像コンテンツの版権を多く保有している。同社の2007年の営業利益は20億ウォン(約2億2,590万円)となり、8年ぶりに黒字転換したが、それにはこうした映像関連の版権による利益が大きく寄与している。
こうしたコンテンツ強化の動きにさらに追い風となっているのが、地上波放送のリアルタイム放送への動きだ。この動きは、「インターネットマルチメディア放送事業法案(IPTV法)」が、2007年12月末に国会を通過したことによる。
実際、これを実現するためには放送局やIPTV事業者、政府間による調整が必要だが、まずは制度が先に整えられた状態だ。テレビ番組をリアルタイムで見られるというのは、これまでVODのみ提供してきたIPTVに、ニュース性を加えることにもなるので、コンテンツ強化の動きの追い風となることが期待されている。
SKグループも参入か
そんなIPTV業界に最近乗り込んできたのが、ポータルサイトの「Daum」を運営するDaum Communicationだ。同社は、Microsoft KoreaとセットトップボックスメーカーのCelrunとMOU(Memorandum of Understanding、了解事項覚書)を締結。「オープンTV(仮称)」というIPTVサービスを提供していくと発表した。
オープンTVの最大の特徴は、既存のIPTVのようにVODなどの映像サービスが受けられるだけでなく、通常のPCと同様に、インターネットも利用できるという点にある。さらに受像するデバイスも、テレビに限らず、PCやUMPC(Ultra-Mobile PC)など、多様に対応するとしている。
また、「Xbox 360」を、セットトップボックスとして使えるようにもするとしている。これらの特徴を考えると、"オープン"の名の通り、まさにあらゆるものに開かれたサービスにすることを目的としていることが分かる。MOUを締結した3社は、2008年の第2四半期にも、プレサービスを開始したいとしている。
ただし、オープンTVの運営企業には、他のIPTVサービスとは異なり、自社のネットワークを持つ基幹通信事業者が含まれていない。そのため、現在議論されている「IPTV施行令」において、基幹通信事業者からネットワークを制度的に借りられるようになることが、サービス提供開始の条件の1つとなる。
だがもしそうなったとしても、ネットワークを借りる対価として、通信事業者へ莫大な金額を支払う必要が出てくる点が憂慮されている。ここまで来ると、Daum側が通信事業者とうまく話をつけることに期待するしかないだろう。
また前出のHanaroに関しては、携帯電話事業者のSK Telecomが買収手続きを進めている。今後、SK TelecomがHanaroの経営権を完全に握ることとなれば、ポータルサイト「NATE」やSNSの「サイワールド」などを運営するSK Communicationsなどが所属するSKグループも、IPTV業界に参入してくることとなるだろう。
市場自体がまだ成熟していないだけに、動きが激しい韓国のIPTV業界。国境を越え、さまざまな企業を巻き込んでの競争が今後も展開されそうだ。