進化する広告のビジネスモデル
――新たな広告事業での特徴はどのようのものか
広告のビジネスモデルは大きく進化することになる。米マイクロソフトがaQuantiveの買収を完了し、組織体制も整え、広告事業強化の準備ができてきたことから、2008年には基本的な計画を発表できる。まずはネットワークによる広告配信モデルで、aQuantiveのDRIVEpm部門が起動し始める。これまでのオンライン広告のネットワークのしくみは、広告の在庫を集めて、広告主向けに配信するというものだったが、DRIVEpmは、それらの在庫を最適化し、売上げの向上を支援する。「Aサイト」「Bサイト」に同じ広告「X」を載せた場合、ネットユーザーが、まず「Aサイト」で、その広告を視た後、「Bサイト」に移動したとすると、そのユーザーは「Aサイト」を通じて「Bサイト」にある「X」を視たことになる。そのような場合は、「Bサイト」から「Aサイト」に何らかの還元がある。従来のネット広告配信のシステムでは、「Aサイト」にも「Bサイト」にも広告を表示することに留まっていたが、DRIVEpmに出稿すれば、この場合、「Aサイト」は、自分のサイトで獲得したアクセスで、プラスアルファの収入を得ることができるという大きなメリットがある。このネットワークには、参加するサイトが増えれば増えるほど、それぞれのチャンスが拡大する。
――マイクロソフトの広告事業の枠組みはどう変わるのかこれまでのマイクロソフトの広告事業は基本的に、MSNを基盤にして、MSNのユーザー向けに広告を配信するモデルだったが、DRIVEpmや(aQuantiveの部門の一つで、広告管理ツールなどを提供する)Atlasなどにより構成されるエコシステムで、収入を得る機会がさらに増える。aQuantiveのビジネスモデルにより、ネット広告配信のモデルはさらに進化する。配信先のデバイスはパソコンからモバイル、将来的には、IPTVなども視野にある。ベースのモデルが確立すれば、接続するデバイスはさらに広がる。
Googleとは違う"リッチ"なサービスを提供する
――ネットワービスと広告の連動ではGoogleが先行している
2007年11月、来日した米マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマーがGoogleとマイクロソフトとの違いについて話していた。Googleは何でもシンプルにやろうとしている。それが強みでもあるが、マイクロソフトは、ユーザーにリッチな体験をしてもらいたい。この点、価値の提供の仕方の発想が根本的に異なっている。Googleがシンプルであるのは、ユーザーには利便性をもたらす面もあるが、実はそれしかできないのではないか。データやアプリケーションをローカルではなく、データセンター、インターネット上に置いて利用する、クラウドコンピューティングだけでは限界がある。データの転送速度、圧縮技術が優れていたとしても、ソフトのプラットフォームをもっていなければ、完成度の高いサービスを提供するのは困難な部分もある。Googleは、Officソフトのような製品も用意しているが、機能に制限がある。プラットフォームをもっていない弱みが出ているのではないか。プラットフォームをもっているからこそ、できることはたくさんある。
――Googleとは、どう戦っていくのかWindows Liveでは、検索も進化させる。インデックスの増強により、検索結果はGoogleと同等、もしくはそれ以上にしなければならない。Relevancy(検索結果とキーワードの関連性)を圧倒的に高くしないと、Googleとの差別化は困難になる。また、2008年には、検索サービスも、より日本人に適合したものにしていきたいと考えている。新しい広告配信ネットワークモデルと、検索の両方をうまく融合させていきたい。
――「リッチ」であることはなぜ重要なのかすべてのメディアがデジタル化されることになると、リッチな体験、リッチなコンテンツが重要になる。ただ、依然、すべてのインターネット接続環境が光ファイバー化されているわけではなく、ADSLのユーザーも多く、パソコンの処理性能にも問題がある。ユーザーにリッチな体験を広めていくにはまだ時間がかかるだろう。ただ、タイムラグはあるが、いずれは皆が、同様なリッチ体験ができるようになる条件が整う。方向性としては、日進月歩で高速化が進んでいくのだから、長期的にみて、展開していきたい。
――Windows Liveで、マイクロソフトはネットワーク事業の比重を大きくするのかもともと、マイクロソフトは、ソフトウェアベンダーとして良いソフトを有償で提供するモデルが基本だ。Windows Liveで新たな広告ビジネスのモデルを構築したわけだが、それが、これまでの、有償でソフトを供給するモデルに取って代わるわけではない。その点、SaaS(Software as a Service)は、有償でソフトを提供する手段の一つとして重要になってくる。マイクロソフトは、プラットフォームとソフトの力で、デジタルライフスタイルを支援、強化することができる。エンドユーザーとの接点の部分で、さらにサービスを提供していきたい。2008年は、マイクロソフトのオンラインビジネスの勝負の年になる。Windows Liveが担っている役割は非常に大きくなる。