今後もM&Aのチャンスうかがう

結論的に言うと、聯想ブランドの国際化には流れに逆らって舟をこぐような困難さがある。この点について、聯想の創業者である柳伝志氏は公開の席で以下のように述べたことがある。

「世界には、自社ブランド創造を目指しながら、OEMとの間を行ったり来たりした企業がたくさんある。この面で成功したのはホンダ、ソニーといったごくわずかの日本企業だけだ。だが、こうした企業も半世紀にわたってたゆまぬ努力を尽くしてきた。これに対し、聯想の歴史はわずか20年。国際化は始まったばかりで、道のりはまだはるかに遠い」。

ブランド構築をめぐる問題点を除けば、最近の聯想の動きからは、経営戦略における積極性がうかがえる。11月4日、楊氏は第2四半期の業績発表会で次のように述べた。

「IBMのPC部門買収、経営リソース統合を完了し、国際企業グループとなった当社だが、今後、上海と深センにある(人民元建ての国内投資家用の市場である)A株市場に復帰する可能性もある。同時に、当社は欧米のPCメーカーに対するM&Aの機会があれば、今後もそのチャンスを放棄しない」。

3事業をコアに経営多角化を推進

楊氏は、2年間繰り上げてのIBMの商標使用中止を発表することで、IBMから引き継いだ経営資源と元々持っていたリソースの統合完了を宣言したといえる。さらに、過去3年間で、資産30億ドルの中国のローカル企業から、同150億ドル規模の国際企業に成長した自信と実績を誇ってみせたのだった。

聯想が公表した2007年度第2四半期の財務報告書によると、総売上高は44億ドル(前年同期比20%増)。パソコンの販売実績でも3四半期連続で平均23%増と、全世界のパソコン市場の平均成長率(15.7%)を大きく上回った。

また、楊氏が示唆したように、中国国内では、聯想がA株市場に復帰上場するとの噂で持ちきりだ。戦略投資を担当する持ち株会社を筆頭に、聯想はIT、投資、不動産という3事業をコアに多角化経営を図っており、過去7年間で、聯想が保有する株式は約11億ドルに膨れ上がっている。巨大化し、国際化した聯想が、IBMブランドとの訣別の後、真の「ブランド」を打ち立てるためにどのような戦略を打ち出すのか。また、強大な資本力をどう行使していこうとするのか。世界のIT業界、実業界が見守っている。