米Salesforce.comは12月5日(現地時間)、同社サービスの世界での契約総数が100万に到達したことを発表した。同社ではこれを記念して米ニューヨークと、本社のある米カリフォルニア州サンフランシスコの2拠点を結んだ同時中継での記念発表会を開催した。また同記念イベントでは、新サービスとなる「Salesforce to Salesforce」の発表も行われている。

100万契約のマイルストーン達成、ひとつのDBですべての需要を切り拓く

同社の発表によれば、世界でのSaaS(Software as a Service)サービスの契約総数は今月12月中にも100万に到達、顧客企業数は3万8100にも上るという。ニューヨーク側の発表会場に登場した米Salesforce.com会長兼CEOのMarc Benioff氏は、冒頭の挨拶で近年になり急速に契約数の伸びが加速していることに触れ「(2007年10月末時点での)過去4四半期の売上は6億7600万ドルに達し、SaaSベンダーとしては初の売上10億ドルの大台に向けて走りつつある」とコメントした。

米Salesforce.comの会長兼CEOであるMarc Benioff氏。同氏はニューヨークにいたため、今回筆者がいたサンフランシスコ会場では同時中継が放映された

「時代が移りゆくなかで、SaaSというビジネスモデルが登場してきた。"オンデマンド"というと各社によって言葉の定義が異なるが、Salesforce.comではオンデマンド型サービスに求められる要件として "Multi-Tenancy"、"Subscription"の2つが必要だと考えている。Multi-Tenancyは(論理的に)1つのデータベースを複数の企業で共有する仕組み。これがコスト効果を生み出し、各企業のデータセンターごとにDBが分散して存在する形態とは異なる、最も効率のよいサービス方法となる。Subscriptionは必要なときにだけ契約、必要な分だけ料金を支払い(Pay As You Go: PAYG)、インストール作業を必要とせずすぐに利用できる。紙のパッケージやCDはおろか、PCさえ必要なく、環境にも優しい」と軽いジョークを交えつつ、SaaS型ビジネスのメリットを語った。

また直近の成果として、VisualforceやForce.comの利用が拡大していることにも触れている。Benioff氏によると「Salesforce.comのプラットフォームは広がり続けている。開発言語のApexをはじめ、6万以上の開発者がPaaS(Platform as a Service)のForce.com上でインフラの構築を行っている。最新のWinterリリースでは2つの新しいアプリケーション(Content、Ideas)を発表した。さらに先日のDreamforce(2007年9月開催の同社イベント)で発表したばかりのVisualforceだが、(わずか数ヶ月ほどで)すでに5800ページもの利用が行われている」という。

Salesforce.comはかなり早期から日本市場開拓を行っていたことで知られるが、Benioff氏は日本での成功を特に強調し、「今回顧客として新たにキヤノンが参加しており、4000契約を獲得した。大口顧客としては、すでに日本郵政公社(現:日本郵政株式会社)とみずほ銀行がサービスを利用している。世界での契約数100万に対し、日本だけで10万契約。これは米国を除くすべての地域の中で最も高いシェアを誇っている」と述べた。

また創業間もなくより標榜している企業としての社会貢献プラン「1/1/1モデル」の活動についても触れ、教育や医療などの分野で活躍するNPOら10団体を選出し、発表している。これは同社の100万契約達成を記念した行事の1つで、表彰された10団体の代表をニューヨークとサンフランシスコのそれぞれの会場に招いて紹介した。各団体にはSalesforce.com Foundationより100万ドルの賞金が授与される。

100万契約記念のNPO授賞式。ニューヨークとサンフランシスコの会場でそれぞれ5代表ずつが壇上に呼ばれ、賞金を授与される

Visualforceの使用例。左側がAdobe Flexを使ったインタラクティブなダッシュボードで、ビューやデータを変更することでグラフの状態がリアルタイムで変化する。右側がタブレット端末向けの表示モードで、ボタン等が大きく表示され、タッチパッドでの動作が行いやすくなっている