マルチコアプロセッサ開発環境 - MP T-KernelとT-Engine開発ボード

マルチコアプロセッサでは、アプリケーションプログラムを複数のコアに分散させ並列実行するために、マルチプロセッサ対応のOSが必要となる。情報系のコンピュータではすでにマルチプロセッサ化が進んでおり、WindowsやLinuxなど代表的なOSはマルチプロセッサに対応している。組み込みシステムでは、マルチコアプロセッサを導入する場合にはリアルタイムOSが必要である。

YRPユビキタス・ネットワーキング研究所は、昨年(2006年)6月にマルチプロセッサに対応したリアルタイムOS「MP T-Kernel」注1を発表した。またMP T-Kernelの研究および開発のための試作品として、MPCoreを搭載したハードウェア「T-Engine」も開発されている(写真1)。これは一般向けには提供されていない。しかし前述の「NaviEngine」といったマルチコアプロセッサ製品を搭載したT-Engineの販売が計画されている。つまり、もうすぐマルチコアプロセッサ搭載のT-Engineが入手可能となるはずである。

写真1 MPCoreを搭載したT-Engine

注1

現在、組み込みシステムに広く普及しているOSにμITRONがあるが、μITRONの技術をさらに発展させたOSに「T-Kernel」がある。そして「MP T-Kernel」はマルチプロセッサに対応したT-Kernelである。なお、このT-KernelはT-Engineフォーラムにて仕様が定められ公開されている。
T-Engineフォーラムは、トロンプロジェクトのリーダである坂村健氏(東京大学教授/YRPユビキタス・ネットワーキング研究所・所長)が中心となり、組み込みシステムの開発プラットフォームの開発および標準化などの活動を行っている団体である。T-EngineフォーラムはOSだけではなく、標準の開発プラットフォームとして「T-Engine」というハードウェア規格も定めている。T-Engineはプロセッサに依存しない規格であり、ARMはもちろんSuperHやMIPSなど、さまざまなプロセッサを搭載したT-Engineが販売されている。