プーリングは大半が導入、その他のサービス導入で差

今回の調査で、CMSの導入状況を上記のサービス別に調べた結果、CMSを導入済み企業の94%がプーリングサービスを導入、定期性貸借も67%の企業が導入し、両サービスが半数以上の企業で普及していることが分かった。一方、支払い代行(総合振込)は46%、ネッティングは35%にとどまり、プーリングに比べて普及率が低い現状が明らかとなった。

さらに、グループ資金の中でCMSに集中した資金の割合である「資金集中率」でサービス導入状況を見ると、統括会社に50%以上の資金を集中させている集中率の高い36社においては、プーリングサービスの導入が100%となっているほか、定期性貸借は75%、支払い代行(総合振込)も53%、ネッティングも44%と、いずれも高い導入比率を示している。

CMSへの資金集中率を高めるには、グループ企業とのコミュニケーションが大切な要素となる

これに対し、資金集中率が50%未満の企業24社においては、プーリングサービスは96%と高いものの、定期性貸借は50%、支払い代行(総合振込)は25%、ネッティングはわずか17%と、資金集中率が高い企業に比べて、プーリングを除く各サービスの導入比率が明らかに低くなっており、資金集中率による二極化が進んでいる状況が浮き彫りとなっている。

"After J-SOX"を見据えたCMSの活用を

導入効果に関しても、CMS導入による「財務部門一元化による事務処理工数軽減」の効果について、資金集中率の高い企業の64%が「十分である」か「ほぼ十分である」と回答したのに対し、同率の低い企業は42%しか「十分である」か「ほぼ十分である」と回答しなかった。「連結決算業務の合理化」の効果についても、同率の高い企業の25%が「十分である」か「ほぼ十分である」としたのに対し、同率の低い企業で同様の回答をした企業はゼロだった。

アビームコンサルティング 金融統括事業部 シニアマネージャー 中村正史氏

アビームコンサルティング エンタープライズビジネスソリューション事業部 プリンシパル 永井孝一郎氏

こうした調査結果について、アビームコンサルティング金融統括事業部シニアマネージャー 中村正史氏は「資金集中率が高い企業においては、グループ会社担当者が参加する会議体を設けるなど、統括会社とグループ会社のコミュニケーションの促進に努めているケースが多い。今後の課題としては、プーリングにとどまらないCMS機能のフル活用が必要となるほか、コミュニケーションを通したグループ企業の資金繰り精度の向上や海外グループ企業へのCMS導入などが求められている」と説明した。

また、同社エンタープライズビジネスソリューション事業部プリンシパル 永井孝一郎氏は、「内部統制が求める"業務の見える化"や"業務の有効性および効率性の向上"において、CMSが果たす役割は非常に大きい。また、欧米ではすでに主流となっている企業集団としての効率的な連結経営を実現するためにも、"After J-SOX"を見据えたCMSのフル活用が非常に有効」と話し、今後日本企業が目指すべき目標を提示した。