IEM - ハードウェアによる制御

さらに進んだ電源設定として、回路ブロックごとに電源電圧の値を変える方法がある。この場合は電源電圧制御回路を別に設けておく必要があるが、単純な動作/停止に加えて、動作中の消費電力を下げることが可能になる。

可変電源電圧に可変クロック周波数を組み合わせると、さらに動作中の消費電力が効率化する。この場合は、電源電圧制御回路とクロック制御回路が連動して動作できるようにする必要がある。

IEMでは、この連動した動作(DVFS)をソフトウェア制御によって実現している。高速動作が必要な回路ブロックは高い電圧と周波数に、低速動作でも十分な回路ブロックには低い電圧と周波数に設定することが可能で、電力の消費量をより一層効率化する。IEMを実装するためのハードウェアとして、ARMでは次のコンポーネントが用意されている。

  • IEC: Intelligent Energy Controller
  • APC: Adaptive Power Controller
  • HPM: Hardware Performance Monitor

IEMのハードウェア制御構造は2種類ある。1つはオープンループ、もう1つはクローズドループである。オープンループ(図7)では、IEMのソフトウェアで予測された電源およびクロック制御が、ハードウェアに限定された選択肢より設定される。ただし、実際のハードウェアの状況については、IEM内でフィードバックを入れていない。この方法は制御がシンプルでハードウェアも簡単である。

クローズループ(図8)ではIEMソフトウェア制御でハードウェアが動作し、即、動作のフィードバックがIEM内のハードウェアに戻るしくみになっている。そのため、オープンループのように選択肢は限られておらず、柔軟な制御が可能になっている。ただし、制御とハードウェアが複雑になる部分がある。

オープンループとクローズドループのどちらを選ぶか――それは「シンプル」か「フィードバックが確実」かの選択である。

図7 シンプルなオープンループ

図8 フィードバックが確実なクローズドループ