また、開発者の育成については、「全世界に1,000万人の開発者がおり、また、ソフトを書いている技術者が500万人いる。日本では約50万人の開発者がいると聞いている。かつてのCOBOLの開発者は、コードも書き、ビシネスアナリストもやった。だが、現在の開発者は多くの種類に分類される。スクリプトを書いたり、詳細なシステムプログラムを書いたり、Webサイトを書くという開発者もおり、求められるスキルが違ってきている。
Webプログラマ、ビジネスプログラマ、システムズプログラマ、ゲームプログラマでは、ものの考え方が違うのは当然だ。これからはますます分業化が進んでいくだろう。開発ツールの将来の方向性を見ても、分業化が進むことがわかるだろう。ユーザインタフェースをデザインする人とコードを書く人とでは、明らかに使うツールが違う。しかし、偉大な開発者というのは、すばらしい頭脳を持ち、詳細にも目を向けて、忍耐深く、思慮深い。そして、最も優秀な技術者は、全体像も一緒に見ることができる。全体像を見るという能力は、多くの人が持っていないのが現状だ」などと語った。
加えて、「私は1971年に一度だけプログラムを書いたが、私自身は詳細指向ではなく、プログラマ向けではないことがわかった」とコメント。会場の笑いを誘った。
エコシステム関連の質問では、「日本のソフトが、世界に羽ばたくためのアドバイスが欲しい」との質問が投げられた。バルマーCEOは「ビデオゲームでは、日本発の技術、コンテンツが使われている。また、コンシューマエレクトロニクス機器のなかにも、日本で開発された多くのソフトが組み込まれている。(日本人開発者は)自らを過小評価しているのかもしれない。
しかし、世界中を見渡すと、たしかに米国で作られるもののが比率が高い。米国にとってもソフト産業がユニークな形の輸出産業となっている。これには理由があるだろう。ひとつは、米国の教育システムがある。コンピュータサイエンス、コンピュータエンジニアリングに関する教育は、他国より重きが置かれている。また、米国は世界最大のソフトウェア消費国であり、これは開発者が顧客の近くにいることの表れともいえる。
日本では年間1,400万台のPCが売られている。これに対して米国は年間6,000万台。日本は世界第2位の経済大国であるが、ITに関しては自動化されていない部分が多い。公的分野での自動化の遅れや、中小企業における活用の遅れもある。人口の差が2 - 2.5倍であるのに対して、日本の普及率は低い。IT業界が本来の力を発揮できていないのではないか。
さらに、技術開発の国際言語が英語である点も見逃せない。中国がなぜインドほど成長しないのかというと、そこには英語能力の違いがある。国際的な技術コミュニケーション言語は英語。デペロッパーの英語能力は重要になっている。MSDNも英語が中心なっており、開発の主流に入るには言語能力が大きな助けになる」と語った。
フォーラムの最後にバルマーCEOは、「今日はこうした時間を持ててうれしく思う」とコメント。再度、「デペロッパー、デペロッパー、デペロッパー」と3回繰り返して、降壇した。
なお、参加者の間からは、「Software + Servicesの概念が理解しにくかったが、今回、対面で話をしてみてそれが理解できた」「クラウドベースにおける今後のソフトの方向性を理解できた」「バルマーCEOが開発者の重要性をわかってくれていることが伝わってきた」などの声が上がっていた。