海外投資家の株式保有が制限される可能性も
海外の各証券取引所も中国企業に対して強い関心を示し、積極的なプロモーションや誘致活動を展開している。香港証券取引所、NASDAQは既に中国国内に事務所を設立しているし、NYSEユーロネクストなども事務所の設立を検討している。中国企業が海外で上場する機会は、これまでより断然多くなっている。
一方、海外上場企業の増加に伴い、そのマイナス面を指摘する声も強くなってきている。例えば、海外上場を果たした企業が調達した外貨を中国国内に送金することが、外貨準備高の増加と人民元切り上げの圧力を増すとの見方だ。さらに、銀行など国家経済の安全に関わる企業の海外投資家による株式保有が、経済政策の実施や国家経済安全面に支障をもたらしかねない、との見方もある。
人民元の切り上げは不可避のため、中国企業の株式を外国投資家に売って入手した外貨は、相対的に「切り下げ」られる宿命から逃げられそうもない。つまり、中国企業の株式という貴重な「家財」を売って取り換えた外貨の価値が目減りするかもしれない、と危惧する見方もあるのだ。
こうした中国国内の世論の動向が、少なからず中国政府の産業政策、とりわけ海外上場支援策と外貨管理政策に影響を与えている模様だ。昨年9月、経済政策を行う商業部など6省庁が、外国投資家による国内企業に対するM&Aに関する規定となる「関於外国投資者併購境内企業的規定」を公表した。
これは、海外上場を目指す中国企業に対する海外投資家によるM&Aと、各企業の株式上場について、より厳格な管理をしようとするものだ。近く、同規定がその影響力を及ぼす時期を迎える可能性が強い。中国企業の海外での資金調達管理や外貨送金管理の強化を目的とする同規定がいつから施行され、またどのように運用されるかに産業界は注目している。同規定の運用次第では、今後VCやPEが参加、あるいは主導する中国企業の海外上場が難しくなる可能性もある。いずれにせよ、今後の動向を見守るしかないのが現状といえよう。