コミュニケーション手段はWeb、メーリングリスト、そしてIRC
貢献者とのやりとりには主にメールを使ってきたが、最近ではIRCを使用することも増えてきたという。IRCはこれまで社内でのやりとりで活用されてきたが、これを外部にも公開しようという取り組みを進めている。MySQL IRCがフリーノードとして公開されているほか、IRCでのやりとりはWeb上にも掲載されている。
IRCのようなリアルタイムなやりとりを進める場合、各国や地域のタイムゾーンを常に考えなければならない。例えば、米国から金曜朝一でミーティングしようと提案があっても、スウェーデンでは金曜でもう仕事が終わるころだ。逆に、スウェーデンで月曜の朝一にミーティングをしようと提案すれば米国では日曜の夜ということになる。タイムゾーンの問題はなるべく公平になるようにその都度調整されるようだ。
一番重要なコミュニティとのやりとりは、MySQL ForgeなどのWebを経由したものだ。プロダクトもドキュメントも同サイトに用意されている。ロードマップも公開されており、フィードバックも得やすい状況が整備されている。開発者の育成方法やC++プログラミングについてはMySQL Universityによくまとまっている。
MySQLの公用語は「へたな英語」 - 第2市場への日本へは特別なサービス展開も
MySQLコミュニティの公用語は「へたな英語」だとKaj Arno氏は説明する。「へたな英語」という表現は世界規模で開発や運用を展開しているコミュニティではよく使われる表現だ。MySQLは北欧の一国であるスウェーデンから発展した企業。スウェーデンの公用語はスウェーデン語であって英語ではない。スウェーデンはノルウェー、フィンランド、デンマーク、そのほか周辺の各国と関係があるという欧州ならではの地政学的条件の中にあり、コミュニケーションの重要性をはじめから熟知している。「へたな英語」が公用語になるのは当然というわけだ。
コミュニケーションの必要性から「へたな英語」が公用語だとしながらも、国や地域のネイティブな言語でのコミュニケーションが重要だとKaj Arno氏は述べている。国や地域の違いは尊重するべきであり、すべての人が英語をしゃべれば世界が平和になるというわけではないという。
国際社会において日本と一番似ている国のひとつにフランスが挙げられるそうだ。日本と同じく多くの取り組みを自国で展開しようとするところがある。ステレオタイプな話のようだが、MySQLにおいてもフランスのコミュニティはなにがなんでもフランス語でやってほしいと要望することが多く、「フランス語は独特だからそれはしかたがない、その点は日本と同じだ」と主張するという。言語というのは一筋縄にはいかないという好例だ。
しかしながら、特に英語から文法や文化的背景が大きく異なる国では「へたな英語」すら難しいところがある。MySQLにとって日本は第2の市場だ。そして日本語は、英語からもっとも遠いところに位置する言語のひとつでもある。このためMySQLでは、ドキュメントやサービスの日本語化を積極的に進めている。既報の通り、英語以外の言語としてははじめて日本語でのMySQL認定試験を開始するなど、日本へのフィーチャーを進めている。こうしたローカライズへの取り組みは今後も積極的に行っていくそうだ。
貢献者をカンファレンスでリクルート
MySQLからはコミュニティへの参加を積極的に促したりはしないという。MySQLが設立した当初からユーザが自発的に参加しコミュニティが形成されてきた。
MySQLの関係者がそうした匿名の貢献者と会える機会が、今回日本でも開催されたカンファレンスなどである。高い貢献をした人にはMySQLからヘッドハンティングされることもあるという。カンファレンスがリクルートの場にもなっているわけだ。従業員は世界30カ国に400名ほどいるわけだが、こうした活動により質の高い開発者を獲得してきた。
MySQLの開発を担うのは、このようにして就職した従業員だ。有償の顧客から寄せられた機能要件は従業員によって開発され、それがOSSプロダクトとしてコミュニティにも提供される。そして、コミュニティの活動によってバグの修正や品質の向上が実施される。このように有償顧客とコミュニティの間にも優れた関係が実現されているわけだ。
最後にKaj Arno氏は「ともかくMySQLをダウンロードして使ってみてほしい」と述べた。改善点がある場合はぜひとも伝えてほしいとのことだ。報告はローカルのユーザグループに対して行ってもよいし、MySQL日本法人を経由して伝えてもよいとのことだ。
またMySQLはMySQL DBの使い方を教育するための教育プログラムを提供しているが、日本においては日本のパートナーを通じて日本語でプログラムを展開している。こうしたサービスをぜひとも活用してみてほしい。