公然通信におけるコンテンツ規制についてKDDIは、「事業者が自主的に行っている違法・有害コンテンツへの対応について、法的根拠や対応基準の明確化が図られることは有意義」として、今回ヒアリングのあった3社・グループの中で唯一賛成する意向を示した。ただ、「通信の秘密や表現の自由との整合性の観点から、規制の範囲は最小限にとどめるべき」と述べ、過度な規制には反対する立場を示している。

プラットフォームレイヤーに関しては、「必要な範囲でプラットフォーム機能に対して、オープン性を確保するための規律の必要を検討することについて賛成」とし、NTTと異なる意見を表明。さらに、「歴史的に形成された通信のボトルネック設備と一体で構築されるプラットフォーム機能については、当該機能を保有する事業者によって市場支配力が濫用されることのないよう、オープン化についての検討が必要」と、再び、NTTを意識したと思われる意見を表明した。

ソフトバンクは中間的立場に

これに対しソフトバンクグループは、NTTグループとKDDIの中間ともいえる立場から意見を表明。弓削氏はまず、「通信・放送の融合的サービスは現行法制下でも実現可能だが、早期実現は困難で個々の案件ごとに課題がある」との現状認識を示した。その上で、レイヤー型法体系への転換について、「今後拡大する通信・放送の融合サービスへの対処が容易」とし意義を認める一方、レイヤーの中身については、「コンテンツ、伝送設備に加え、伝送サービスとプラットフォームを統合したサービス(プラットフォーム)レイヤーの3層構造がより適当である」と提案した。

ソフトバンクが提案した3層構造は、同研究会の構成員である慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構の中村伊知哉教授の考え方に近いもので、中間取りまとめ案で示された伝送インフラのレイヤーを、事業者規制である「伝送サービス」と技術的規制である「伝送設備」に分け、伝送サービスの部分をプラットフォーム規制と合体させ、「サービス(プラットフォーム)」という1つのレイヤーにするとしている。

この3層構造のうち、コンテンツに関するレイヤーについては、特別メディアサービスが基幹放送として特別な社会的役割を担っており、その事業者が保有するコンテンツを開放し、利用しやすくするためのルール整備が必要だと提言している。一方、SNSなどインターネット上のコンテンツについては、現状規制はなく、公然通信とした場合に新たなコンテンツ規律の対象とすることは不適当だとし、特別メディアサービスのみ規律が必要であるとの認識を示した。

また、伝送インフラレイヤーから伝送サービスを除いた伝送設備に関するルール整備として、「加入者回線のボトルネック性を有するNTTについては、現状と同等以上の規制水準を維持し、設備開放を義務付けることが不可欠」とし、KDDIと同様、NTTに対する規制を維持するべきだとした。

一方、自ら提案した伝送サービスにプラットフォームを加えたレイヤーに関しては、(1)プラットフォームの定義が不明確、(2)現状、プラットフォームに係る規制が存在しない、(3)新規性のあるプラットフォームを規制することに懸念がある、などを理由に、「原則自由にすべき」との立場を表明した。こうした立場は、KDDIよりNTTグループに近いといえ、ソフトバンクグループの中間的な立場を示している。

こうして見ると、「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」第13回会合のパブリックコメント公表で、「中間取りまとめ案に大枠で賛成が多い」とされた通信業界においても、微妙な温度差があることが分かる。特に、NTTグループの持つ圧倒的な設備支配力に対して、同業他社からの警戒感が依然強いことが明確となっている。

また、コンテンツに関する規制については、NTTグループとソフトバンクグループが原則反対であるのに対し、有害コンテンツ規制のルール化についてKDDIが原則賛成するなど、見解の違いが明らかとなり、今後の議論にどう反映されるか注目される。