社員や地域の力を結集、毎朝"品評会"も

オンラインショップと並び、同社が取り組んでいるのが、社員や地域の力を結集したブログの活用だ。社員ブログは2003年から開始、現在では久米氏の「Tシャツ道」と題した社長ブログをはじめ、役員を含む11人がそれぞれ複数のブログサービスを利用、毎朝の朝礼では前日書いたブログの内容を発表して意見を交換する"品評会"を開いている。ブログのテーマは、久米繊維工業製のTシャツを使った顧客のイベント報告などさまざまだが、社員一人ひとりが心がけているのは「自社の商品へのこだわり」(久米氏)を発信することだ。また、社員だけでなく、法人顧客や地域の人々を合わせ、約50ものブログで久米繊維工業に関する情報発信をする体制を築いている。

久米繊維工業の3代目社長、久米信行氏

では、ブログによる情報発信で何が生まれるのか。明治大学商学部で「ブログ企業論」の講座も持つ久米氏は、「ブログを活用することで、コストをほとんどかけずに自社ブランドの確立が可能になる」ことを挙げる。「ブランドを確立するには、自社製品へのこだわりや期間・数量・場所などの限定性、物語性があることが必要だが、中小企業にとってはこうした情報を発信するための資金は少ない。コストをほとんどかけずに、中小企業ならではの密なコミュニケーション環境を生かし、一人ひとりの力によるきめ細かい情報発信ができるブログは、まさにうってつけのツール」(久米氏)と話す。

同社では、ブログによる多方面からの層の厚い情報発信により、検索エンジンで「Tシャツ」のキーワードを入力した際、久米繊維工業の関連ページがトップ20に2件入るようになるなど、ネット上での情報発信に大きな効果があったという。久米氏は「社長や社員が実名でブログを書くのは勇気がいるが、会社への信頼性が高まる効果もある。中小企業の経営者は、ブログを毎日更新するだけで飛躍的に情報発信力が強まることを知ってほしい」と提案している。

久米繊維工業の伝統を示す額

「久米繊維謹製」ブランドも徐々に浸透

オンラインショップやブログといったIT活用により、約2年前から始めた自社ブランド「久米繊維謹製」も徐々に浸透。OEM生産からの移行も進んでおり、オーガニックコットン製がほとんどを占める同ブランドのデザインTシャツはすでに110点を数えている。2007年6月期の決算は、売上高6億2500万円、経常利益は2300万円だった。久米氏は、さらなる事業発展に向け、「現在は中国製などに席巻されている繊維産業だが、外国から来た観光客がわざわざ来社してくれるなど、日本製の繊維製品の価値は確実に見直されてきている。当社の商品により親しみをもってもらうためにも、今後は工場現場の模様を動画などで伝えていけるようにしたい」と新たな情報発信に意欲を燃やしている。