同社の製品の特徴として、社内SNSならではのきめ細やかな配慮を大切にしていることが挙げられる。まず、IDを連番にしないなどの個人情報を守る確かなセキュリティを実現していることが、重要な点だ。他にも、システムに詳しくない管理者であっても管理画面から自由に詳細をカスタマイズできる仕組みにしたり、SNSは急激にユーザーが増える傾向があり負荷が通常のサイトの何倍もかかるため、業界で唯一負荷テストなどを実施し、安定して使用できるように心掛けている点も大切だ。同社は、これらの条件がクリアできて初めて信頼のおけるSNSとして成功すると考えている。
社内SNSには、他にもコンシューマー向けとは違う特別な機能が充実している。たとえばQ&A機能は、仕事で行き詰まった時に質問すると誰かが回答できるというもので、その回答に対して評価もつけられ、社員の知識をうまく結集させることができる。アンケート機能は、誰が答えたか分かるようになっているし、ブックマーク機能は、社員が何に興味があるのかが分かる。
"みなつく"という社内wiki機能ではユーザー同士がコンテンツを編集でき、テーマごとに非公開にもできる。話し合って外向きに発信したいことが出てきた場合、"オフィシャルサイト"機能を使って、外向きに発信することができるほか、SEO対策なども可能だ。その他、Googleマップとの連携や、動画配信機能、検索、コミュニティ機能、携帯からも新規登録ができる点など、かなりの充実ぶりだ。
SNSというと、招待制を採用し、Googleなどの検索サービスには引っかからないというイメージが強いが、米国のMyspaceなどのようにオープン制にすることもできる。オープン制とは、招待制ではなく誰でも入ってこられるようにするという意味と、外から見れるようにコンテンツを公開するという意味がある。オープン制にすると、検索で調べた人が入って来やすいというメリットがあるので、目的によって使い分けるのがお勧めだ。
社内SNSの三つの役割
従来社内で使われていたグループウェアは、社員を管理下におこうとする、いわば"守りのツール"だった。一方、社内SNSは人材や情報を探しやすい"攻めのツール"だ。SNSは情報が高速で飛び交いつながっていくため、目的の実現を加速化させられるツールなのだ。具体的には、「社内コミュニケーション」、「内定者の囲い込み」、「OB・OGの囲い込み」のために使われるケースが多いという。
「社内コミュニケーション」というのは、たとえばナレッジマネジメントだ。地域的距離や時間の制約なく、同じ情報を共有することができるようになるのだ。また、営業マンにとっては、会いたいクライアントとつながりが深い人を調べて紹介を頼むこともできるし、同じクライアントに二重に営業をかけるという無駄を省くことができるなどのメリットもある。NTT東日本では現在、7,500人以上が社内SNSに参加、社員同士のつながりが促進されたという。NTTデータでは、セクショナリズムを廃する目的としての企業内SNSが機能し、4日間で2,000人が集まり、現在も5,000人以上が参加しているという。
「内定者の囲い込み」にも社内SNSは役に立つ。社内SNS内で内定者同士が交流を図ることで、地域差なく情報を共有することができるのだ。また、内定を辞退しそうな人を事前に知り、フォローすることも可能。過去、Y-CUBEでは、内定者の囲い込みのために社内SNSを導入し、e-ラーニングによる事前研修なども取り入れ、内定辞退者がゼロになった。需要が多いので、内定者専用のパッケージも開発した。
「OB・OGの囲い込み」もメリットが大きい。たとえば、保険業など専門の知識と技能が必要な仕事の場合、代わりの人が見つからず休暇を取るのも大変だ。そんな時に、代わりを務めてくれるOB・OGがいれば、新たに代理を募集したり教育する手間もなく、スムーズに代わってもらうことができる。日本興亜損害保険では、休職社員の代休要員の確保を目的としたOB・OG囲い込みのためのSNSを導入、うまく成果を上げている。
また、社内SNSにはセクショナリズムを排する働きがあるため、情報が抑制されにくく、経営層がより正確な情報をつかんでおくことができ、SOX法対策にも適しているという面もあるという。