SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)はここ数年で急速に利用者が増えている。日本では代表的なものとしてmixiやGREE、モバゲータウンなどが有名で、友人とリンクというかたちでつながり、日記やコミュニティなどで交流するネット上の社交場と位置づけられている。

最近、それらのコンシューマー向けに加えて、社員が会員となる「社内SNS」や、会員が経営者限定の「経営者特化型SNS」など、SNSを経営に生かそうという企業が多く現れている。また、内定者の囲い込みなどに使われて成功した事例もあり、SNSの使われ方の幅はますます広がっている。そこで、社内SNSのソリューションを販売している最大手、ビートコミュニケーション代表取締役の村井亮氏に、なぜ今、社内SNSに注目が集まっているのか、また社内SNSの可能性について話を伺った。

仕組みが難しい社内SNS

ビートコミュニケーション代表取締役・村井亮氏

「SNSの会社ということで、初期はmixiやGREEの競合と間違われることも多かった」という村井氏。実際は、ビートコミュニケーションは当時から色々な種類のSNSを企業向けにパッケージ販売に特化しているため、一般ユーザー向けに運営している会社とはビジネスモデルがまるで違う会社だ。

同社は"社内SNS"というコンセプトを国内で最初に固めた会社として知られ、2003年の12月に慶應大学のインキュベーション団体で、国内で最初にソーシャルネットワークの実験「SIV(SFC Incubation Village) Connect」を行ったこともあり、SNSのパイオニアとして知られている。

今でこそ「1日20社もの問い合わせがある」というほど順風満帆なビートコミュニケーションだが、まだSNS自体が知られていなかった頃は厳しい時代が続いた。当時は会社の経営方針でIT業界特有のコピー合戦になることを恐れ、新聞や雑誌などの取材や問い合わせなどは全て断っており、mixiが注目されるようになるまで、国内での認知も低かった。

今では多くの企業に社内SNSの効果が認められ、現在では、NTT東日本、NTTデータ、日本興亜損保、パソナ、日本生活協同組合連合会、損保ジャパン、角川クロスメディアなど、さまざまな業種の大手企業が導入している。導入して効果があった企業の口コミから、採用が次々広がっているそうだ。

同社の、通常のSNSとは違う社内SNSに特化した独自のシステムは、ここにくるまでにプログラムを5回も開発し直している。mixiがスタートした頃は丁度、5回目の最中だった。

社内SNSの場合、同じものがどこでも通用するわけではない。会社ごとに存在する千差万別のニーズにあわせてカスタマイズする必要があり、販売数が増えてくると、例えばバグが万一出たとしても、どこから出たか瞬時に分かるような設計にしておくことが重要となる。そのため、機能は全て最初からモジュール別に別けられて設計されている。品質管理が何よりも重要だ。現状は一般的なコンシューマー向けのSNSではこのような設計を施している会社は殆どない。結局1年半かけて、社内SNSならではのニーズに対応できるよう、ソースを一から起こしたのが現在のものだ。