モータ駆動の自動車はエネルギ効率が抜群に高い
このX1プロトタイプだが、燃費は170マイル/ガロン(72km/L)と抜群に良い。一般にガソリンエンジンのエネルギ効率は、最適の条件下でも35~40%程度である。普通の走行では、わずか15%程度と効率が悪い。一方、モータのエネルギ効率は85%と格段に高い。
ただしX1プロトタイプの電池の容量は、ガソリンに換算して0.8ガロン程度である。そのため、通常走行で100マイル(160km)程度しか走れない。しかし、遠出する場合はともかく、買い物などで自宅からそう遠くない範囲を走っている場合には夜に充電すれば、次の日は1日走れるという程度の容量である。
また、X1プロトタイプは環境に優しい。例えば火力発電所は化石燃料を燃やして発電しているが、送電ロスを考慮してもガソリンエンジンよりもエネルギ効率が高い。また、二酸化炭素を排出量という観点では、当然のことながらモータからの排出量はゼロである。発電所の排出量については分からないが、個々の自動車で二酸化炭素の発生を抑えるよりも、発電所でまとめて対処したほうが容易である。
環境保護には燃費の悪い車を改善することが大事
ガソリン車でも燃費の改善が進んでいる。しかし、50マイル/ガロンという燃費の良い車を100マイル/ガロンに改善しても、100マイルを走るのに必要なガソリンは2ガロンが1ガロンに減るだけで、その効果は小さい。むしろ、10ガロン/マイルなどといった燃費の悪い車を20ガロン/マイルに改善すれば、100マイル走行に必要なガソリンは10ガロンから5ガロンに削減できるので、より効果的だと言える。
米国の田舎などでよく見かけるピックアップトラックという小型トラックや、スポーツカーがこの10ガロン/マイル級の車である。Wrightspeed社はこういった車をターゲットにしているという。
二酸化炭素の削減や石油の消費を抑えるという点では、台数の多いピックアップトラックをターゲットにするほうが格段に効果が大きい。しかし、まだまだ電池が高価なので、現状ではガソリンエンジンと競争できない。したがって、まずはスポーツカーをターゲットにしたのだそうだ。
なお、今回のDACで展示されたX1はプロトタイプであるが、同社は製品版の開発を進めている。販売価格はは12万ドル程度(約1,500万円)となる予定だという。スーパーカーの中では安価なほうだし、何よりも話題性があるということで、ハリウッドスターなどからすでに予約が入っているという。