EUV露光装置は、現行のArF露光装置とは大幅にその構造が異なる新技術の固まりだ。光源は波長13.5nmの極端紫外線であり、現行露光装置のArF光源の波長193nmに比べて大幅に波長が短く、圧倒的に細かな描画が可能なポテンシャルを持っている。しかしその光源の開発は困難を極めており、現在のASMLのα機は、平均で集光点出力が10W。スループットはウェハ10枚/時間。α機は試験機としての性能しか実現して居らず、量産機ではこれより約10倍のパフォーマンスが求められている。また、光学系は多層膜ミラーを使った反射光学系を用いており、ミラーの多層膜形成と研磨には原子の大きさレベルの精度が求められる。EUV光は空気に吸収されてしまうため、装置内は高い真空度と水分の除去が求められる。その他、コンタミネーションやデブリなど汚染の解消、レジストの感度の改善など、課題は山積みだ。
IMECに納められたASML製のEUV露光装置のα機。 |
このように開発は困難な課題を多数抱えており、実現の可能性について疑問を投げかける声も多かったEUV露光装置だが、ASML、Carl Zeiss SMT、IMECは、開発に全力を投入している。IMECの研究者は述べる。「1年前と比較して、EUV露光技術に対する半導体業界の見方は大きく変わりました。1年前は疑問視する声もありましたが、今は、EUV露光装置は大いなる注目を集めています。IMECのパートナーの80%はEUV露光技術を重要と考えています。今年に入って新たにIMECのプログラムに参加した半導体製造メーカーも、その目的はIMECが備えるASML製のEUV露光装置のα機の検証・開発プログラムに参加するためです。EUV露光装置が次世代の量産技術としてほぼ確信されてきていると思います」。また、Carl Zeiss SMTのCEOのHermann Gerlinger氏は述べる。「研究開発投資の20%強をEUV関連に充てている。これは当社にとってEUVリソグラフィー技術に対する非常に強い投資だ」。ASMLは既にEUV露光装置を製造するラインを格納する新たなクリーンルームの増設工事を開始しており、2008年の第2四半期に完成予定である。このように、ASMLとそのパートナー達は、EUV露光装置の完成に向けて、強力にプロジェクトを推進しているのである。業界に先駆けてEUV露光装置の商用機を完成させ、これを市場に投入し、次世代においても圧倒的な市場シェアの獲得を狙っているのである。