6月下旬に発売される「Adobe Creative Suite 3」の中でも「Web Standard」以外の全ての「Suite」に同梱される「Adobe Photoshop CS3」と「Adobe Photoshop CS3 Extended」。これらはもちろん「Creative Suite」の中心となる、世界中で多くのクリエイターが使用するグラフィックアプリケーションであることはいうまでもなく、ビジネスユーザも多数使用していることから、今回のアップグレードはとても重要であり、その注目度もケタ違いに大きい。そこで今回は、アドビシステムズ プリントパブリッシング部フィールドマーケティングマネージャーの栃谷宗央氏にPhotoshop CS3について、ニューバージョンの気になるポイントを伺った。
バージョンナンバーが10になり、さらに続く根本的な底上げ
「Photoshop CS3」のバージョンナンバーはちょうど「10」。正直言って10回もバージョンアップを続けるアプリケーションというのは、多いようで結構少ないだろう。それだけ長い間ユーザの支持を集め、必要とされるというのは難しいものだと思う。まして、新しい製品が次々と隆盛するような移り変わりの激しいパソコン業界ではなおさらだ。そんな長い歴史の中で、果たして「Photoshop」のユーザが一番求めているのは何だろうか?
今回の大きな変更点は「パフォーマンスの改善です」と栃谷氏はいう。いつもユーザは速度を求めている。「より速く」と。ただ、それは純粋な「速さ」、すなわち起動時間などの体感的な速さ、サクサクと動く動作そのものの速さだけでなく、作業効率を向上させることによる、時間の短縮というような、仕事そのもののトータルな「速さ」という意味も含んでいる。
「開発側が重視しているのは、「品質の向上」と「作業の効率」に尽きると思います。ちょっと極端な例かもしれなせんが、よく使われるエフェクトに「ドロップシャドウ」というのがありますよね。これはご存知のように以前のバージョンでもレイヤーを複製して暗くし、ぼかしを入れてちょっとズラせば可能でした。でも、そう言った手順を踏まないで、一発で可能になったのが、Photoshopのバージョンの5や6あたりでした。従来、手間や時間をかけていた作業を劇的に改善するというのが新バージョンの目的の1つでもあり、また、ユーザの求める「速さ」だと思うのです」。このような面から見ても、根本的な部分からドンと底上げされた、現時点で最も速く、最も高品質なPhotoshopが「CS3」なのだ栃谷氏は語る。
さらにもう一つ、ユーザからの要望で多かったのが「旧Macromedia製品との連携」だという。それに関して栃谷氏は「AdobeとMacromediaが一緒になって、まず最初にやるべきこと」であったという。特に今回のバージョンから長い間「懸念」する点となっていたFlashとIllustratorとの連携がスムーズにいくようになったのは当然のこととしても、FlashとPhotoshopの連携、すなわち「.psd」のダイレクトな読み込みが可能になったというのは、正直ちょっと嬉しい驚きでもある。
このように連携が密になっていく中、今までPhotoshopとコンビを組んでいたImageReadyの存在が気になる。今後はどうなるのかという質問に対して栃谷氏は「今回のバージョンからImageReadyは、同梱されません。もちろん単品としても存在しません」と答えた。長い間、PhotoshopのパートナーであったImageReadyは、その座をとうとう「FireWorks」に譲ることになった。
CS2までは、ツールパレット最下部にあった「ImageReady」を呼び出す「ツール」 |
ImageReady」の消滅により、ツールパレットもスッキリとした感じがする。なお、これは比較のために、オールドスタイルに展開したところだ |
消えてゆくものもあれば、新しくフューチャーされるものも当然ある。眼に付くところではユーザインタフェース。右側のパレットを格納するというアイデアは、クリック一つで簡単に出し入れできる優れたインタフェースだと思うが、使用頻度の高い左側のツールバーも縦一列に変更された。正直、使い始めは少々違和感を生じるのだが、「最初はもちろん違和感はあると思いますが、それは「慣れ」で解決すると思います。インタフェースを変えるというのは、メーカーにとってはものすごいチャレンジだと思うのです。その中で、従来の慣れているスタイルを踏襲しながら、さらに進化しているというのが、今回のPhotoshopのツールバーなどです。これによって、作業エリアが増えたり、使わないアイコンパレットは表示されなかったりと、いろいろなメリットをユーザは実感できると思います」と変更の理由を説明した。もっとも、クリック一つで2列にならぶオールドスタイルに変えられるようにした機能を備えており、従来のツールバーに慣れているユーザへの配慮も忘れてはいない。このあたりは、さすがにバージョンアップを重ねてきたメーカーの経験が生かされているといえよう。