2つ目の基調講演をしたAPNIC(Asia Pacific Network Information Centre=アジア太平洋エリアを管轄するインターネットレジストリー)のヒューストン氏は、コンバージェンス(融合)時代に通信キャリアが果たすべき役割を、軽妙な語り口でストレートに語った。

ヒューストン氏は「NGNもシンプルであるべき」と強調した

まず同氏は「NTTのような大手キャリアになると、流しているのはどれも0か1かのビットなのに、サービスごとに多様なネットワークを運用している。技術というより、ビジネスの問題」として、IPネットワークへの収れんは自然な流れと指摘した。

一方で、「キャリア自身が通信サービスを垂直統合で手掛けるのは時代錯誤」と、いわゆる"マルチプレー"(キャリアが音声・データ・映像など複数の通信サービスを1つの回線で提供、収益機会を増やすこと)の動きを一刀両断。「GoogleやYahoo!、AmazonなどWeb系企業の活況ぶりを見れば分かる通り、ユーザーは自分でサービスを自由に選択したがっている。キャリアに求められるのは、できるだけ安価で高速、できれば安定したネットワークの提供という限定された役割」と強調した。

さらにヒューストン氏は「通信プロトコルとしての出来が悪いIPがこれだけ普及したのは、扱いやすいから。この10年、(IP化により)技術要素を減らしシンプルになってきたネットワークが、NGNに向け付加価値を高めようとしている。だが、その際にも、ユーザーが求めているものを考えれば今後もシンプルであるべき」との考えを語った。ヒューストン氏と山田氏は立場の違いもあり、ある面で主張は異なっていたが、それぞれに説得力のある講演内容だった。