迷惑メール対策の一環としては、総務省と経済産業省が特定電子メール法と特定商取引法で規制を行っている。しかし、特定電子メール法では当初直罰規定がなく、最初に総務相による行政処分を出し、それでも違反するスパマーに対して警察が動く、という仕組みになっていた。スパマーは身元を隠して迷惑メールを送信するため、ISPなどから情報を得られない行政処分では実効性が薄かった。
そのため、2005年には特定電子メール法が改正されて直罰規定が盛り込まれた。それ以降、3件の摘発が行われるようになった。2005年までは、総務相による措置命令が年1回程度だったので、法改正後2年で3回の摘発は「数は増えている」(平松氏)。警察の捜査に時間がかかることも影響しているが、今後も摘発は続いていくというのが総務省の認識だ。
経産省でも、特定商取引法でスパマーへの行政処分を下しており、2000年の法改正で、ワンクリック詐欺への規制も導入された。ところが、最近は出会い系サイトなどで何度も利用規約を提示して加入させるように「適法化」してしまっている、という問題がある。
また、現在広告メールは「オプトアウト」方式を採用しており、広告メールを送る業者は、一定の規制に従えば自由に送信できた。1回目のメールで受信拒否が送られてきた場合、拒否したユーザーに対しては次から広告メールを送ってはいけないというものだが、受信拒否をすることで、そのメールアドレスが現在使われていることがスパマーに知られてしまうため、経産省自身が「受信拒否をしないように」と指導している。
こうした現状を解消するため、経産省では現在、広告メールのオプトアウトをオプトイン方式に改めることを検討。この場合、受信を求めたユーザーにしか広告メールを送信できないため、望まないユーザーに対する広告メールの1回目の配信から規制の対象になる。
また、現在スパマーに対する行政処分は経産相しか下せないが、経産省自身は「人手が足りていない」(経産省消費経済政策課・石塚康志課長補佐)ことから、地方自治体から規制権限を経産相から都道府県知事に移管するよう求められているほか、消費者団体訴訟制度をこの分野に導入するかの議論もあるとしている。
ただし、総務省も経産省も、スパマーが「割に合わない」と感じるような多額の罰金を科すような方向性に関しては慎重な意向を示している。