より万人に向けたPhotoshop Extended

米国での先行販売を横目で見つつ、まだかまだかと待ち望まれていたPhotoshopの最新版「Photoshop CS3日本語版」がついに発表となった。米国版の情報でご存知の読者も多いと思うが、今回、AdobeはPhotoshopのStandardとExtendedの2種類をリリースする。発売は6月下旬を予定。編集部ではExtendedのプレス向けβバージョンを入手したのでさっそく使用してみた。

まず、今回のバージョンではとにかくいろいろな機能が追加されている。なかでも2D / 3D計測ツールやカウントツール、アニメーション作成といった「これは?」と思うような機能がExtendedには備わっているが、その理由はPhotoshopが当初、Adobeが想定していた分野以外、つまり、医療やビデオ、3D等の分野でも利用されていることがわかったからだ。そのため、Adobeがこれまで想定していた分野以外のユーザー向けに特化した機能を用意し、より多くのユーザーにアピールすることができるソフトウェアにしたのがExtended版である。つまり、ユーザによっては、Standardで機能的に足りることも多く、逆に医療関係者やエンジニアにとってExtendedが必須という場合も出てくるだろう。

ちなみにExtendedだけに備わっている機能としては、3D画像とテクスチャの編集、ムービーペイント、モーショングラフィックスとビデオレイヤー、バニシングポイントの3Dサポート、2D / 3D計測ツール、スケールマーカー、カウントツール、DICOMサポート、MATLABサポート、画像のスタックなどである。

新しいPhotoshopのユーザーインタフェースの外観は、パレット類のデザインが従来と変更となり、常時表示は勿論のこと、使用頻度の低いパレットはアイコン化しておくことができるようになった点が大きな変更点といえる(図1)。これにより、様々な形態にパレットを変えることで、小さいモニタースペースを有効に活用することができるようになる(図2)。

図1。新しいPhotoshopのユーザーインタフェースの外観

図2。小さいモニタースペースを有効に活用できる

  これらの状態はワークスペースとして保存しておくことが可能で、すぐに自分の好みの状態を呼び出せる。もちろん、従来どおりパレットを独立させ、表示させておくことも可能で、パレット移動時には半透明の表示になるという演出付きだ。ユーザーインタフェースの変更を嫌う人も多いので、この仕組みは重要である。

スマートオブジェクトの進化系 - スマートフィルタの登場

今回、様々な機能が備わったが、中でも筆者が一番気に入っているのが「スマートフィルタ」だ。前バージョンでリサイズしても画質が劣化しない「スマートオブジェクト」という機能があったが、今回はそれのフィルタ版と考えていいだろう。

以前は一度適用したフィルタを元に戻す場合、ヒストリーでそれまでの作業をリセットしてしまう以外、方法はなかったが、スマートフィルタを使えばレイヤーのオプションとしてフィルタ効果を適用することが可能になる。そのため、自由に効果を切り替えられるようになる(図3、4)。元となる画像に影響が出ないため、何回でもやり直しやテストができるのを魅力に感じるユーザーも多いことだろう。

図3、4。スマートフィルタを使えばレイヤーのオプションとしてフィルタ効果を適用することが可能になる

レイヤーの自動合成機能で写真を作り込む

ちょっと変わった機能といえば、なんと言っても「レイヤーの自動合成」だろう。この機能は別々のレイヤーに存在している、似たような画像から一つの画像を生成する機能で、集合写真の人物の顔を全てカメラ目線に変えたり、別々に撮った被写体を一つの画像におさめたりといったことが可能となる(図5、6)。

図5、6。レイヤーの自動合成により、よそ見をしている人を違和感なくカメラ目線に変えられる

この機能を使えば、同じ場所で別々の時間に撮影した被写体を一つに合成することもできる。合成は非常にスムーズに行われるため、簡単に画像処理したものとはわからないだろう。

また、「フォトマージ」機能もレイヤーを使って行えるようになっており、従来のものに比べ、写真の継ぎ目がスムースになっているのが特徴だ(図7、8)。

図7、8。「フォトマージ」機能もレイヤーを使って行えるので、写真の継ぎ目がスムースになっている

より進化したバニシングポイント - 3D機能も充実

前バージョンで搭載されたバニシングポイントの機能もさらに強化されている。今回は複雑のパースにも対応し、より高度な合成を可能にしている。作例は空のCDジャケットの写真とデザインを、この機能を使用して合成した結果だ(図9,10)。

図9、10。バニシングポイントの機能もさらに強化。複雑のパースにも対応し、より高度な合成を可能に

これだけで驚いていてはいけない。なんと、Extendedでは3Dのデータを直接読み込むことが可能なのだ。しかも、Photoshop上でテクスチャーの貼り込みまでできる(図11)。また、Photoshop上でそれらのデータを自由に回転させられるので、イメージにあったレイアウトが実現できる。

図11。Photoshop上でテクスチャーの貼り込みまでできる

このように、従来ならもう一度3Dソフトに戻ってレンダリングを行わなければならなかった作業が簡単にPhotoshop上で操作できるようになったのも、今回の魅力といえるポイントだ。