スケーラビリティと信頼性

前述のように、Windows Server 2008での最大の特徴はスケーラビリティと信頼性を高めることを大きな目標に掲げた点にある。ダイナミック・パーティショニング機能はその代表的なものだといえるだろう。例えばサーバ内のあるパーティションで動作する特定の処理が、あらかじめ設定されたパフォーマンスの閾値を下回った場合、CPUやメモリといったリソースをダイナミックに割り当てることで、処理速度の低下や遅延を招くことなく処理を継続することができる(「キャパシティ・オン・デマンド」と呼ばれる)。また動作中のプロセスをそのままの状態で別のパーティションへと移動させることで、例えばハードウェアにトラブル発生の兆候が現れたり、定期メンテナンスによる停止が想定されたりする場合などに、システムを停止させることなく処理を継続することができる。

Microsoftではこうしたダイナミック・パーティショニングの機能を「システムの柔軟性とRASを高めるもの」と表現している。RASとは近年のハードウェア製品でよく使用されるキーワードで、「信頼性(Reliability)」「可用性(Availability)」「保守性(Servicealiblity)」の頭文字をあわせたものだ。

WinHECの基調講演や技術セッションでは、NECのハイエンドサーバ「AsAmA」を使った「ホット・リプレイス(Hot-replace)」の機能デモが紹介されている。これは、アプリケーションが動作中のサーバ上でCPUやメモリといったリソースを交換しつつも、システムが停止することなく処理を継続できるというものだ。処理負荷が増大したときに適宜リソースを追加する「ホット・アド(Hot-add)」のキャパシティ・オン・デマンドの機能とあわせ、柔軟性と冗長性を備えるシステムを構築できるようになる。

もっとも、同機能が標準サポートされるWindows Server 2008ではリソースの増減を完全に制御できるわけではなさそうだ。例えば、一度割り当てられたCPUやメモリは、ドライバ等の特定のプロセスが物理メモリ領域やハードウェアリソースをロックしてしまい、自由に解放するのが難しい。キャパシティ・オン・デマンド後の「ホット・リムーブ(Hot-remove)」動作がサポートされないため、余ったリソースを再配分する際には何らかの問題が生じる可能性がある。このあたりは今後の課題といえそうだ。なお、ダイナミック・パーティショニングがサポートされるのはDatacenter Editionまたは、Itanium系プロセッサをサポートするWindows Server製品となる。

ダイナミック・パーティショニングのデモに使用されたNECのサーバ