最後に、最近増えつつある組み込みデータベース適用事例をご紹介します。

携帯電話への適用

最近の携帯電話は、高度なスケジュール管理機能やミュージックプレイヤなどのマルチメディア機能を備えたものも増えつつあります。そしてその一部では、これらのレポジトリとして組み込みデータベースが活用され始めています。今後は、さらに携帯電話の特性を活かして、エンタープライズシステムとのリモートデータ連携や携帯電話側で取得可能な位置情報を組み合わせた在庫管理システム、SFA(Sales Force Automation)といったより付加価値の高い企業向けのサービスへの活用が進むと見られます。

カーナビゲーションシステムへの適用

現在、高機能のカーナビゲーションシステムでは、すでに位置情報(POI : Point of Interest)や、映像、音楽等のコンテンツのメタデータ管理に組み込みデータベースが活用されています。今後は、現在ファイルで管理されている地図データ自体を組み込みデータベースで管理することによるあいまい検索や、空間検索といった便利な検索サービス、サーバとのネットワーク通信機能と組み合わせることによるリアルタイムまたはオンデマンドでの最新地図データの更新サービスといった、より付加価値の高いサービスへの活用が見込まれています。

ルータ/交換機(ソフトスイッチ)への適用

最近、NGN(Next Generation Network : 次世代ネットワーク)やFMC(Fix Mobile Convergence)という言葉が出てきました。このような次世代ネットワークでは、ネットワークインフラをIPベースで構築することで、従来よりも低コストで安全かつ品質の高いネットワークを実現しており、ユーザ管理系機能やセッション制御(呼制御)系の機能のレポジトリとして、組み込みデータベースが活用されています。
今後は、プレゼンスやコンテンツ配信といったサービスを提供するためのサービスデリバリプラットフォームのレポジトリへの展開が見込まれています。

これらはほんの一例にすぎませんが、いずれの例においても、組み込みデータベースが単なるファイルシステムの置き換えから、より付加価値の高いサービスのためのレポジトリへと活用の幅が広がりつつあることがわかります。

今後、組み込みデータベースの活用範囲が広がるにつれて、組み込みデータベースの重要性は一層高まり、組み込みデータベースへの要件もより高機能化していくことでしょう。これに対応するために、組み込みデータベースも、高性能、省リソース、ゼロアドミニストレーションといった特徴を維持しながら、よりサービスに必要な付加価値の高い機能を提供する方向に進化していくと考えられます。

著者
日本オラクル
Embeddedビジネス推進部
竹爪慎治(たけつめ・しんじ)