見た目はもちろん使い勝手も大きく進化した「Adobe InDesign CS3」。今回のバージョンアップのポイントは、大きく分けて「カスタマイズ可能なユーザーインタフェース」「生産性の向上」「長いドキュメントのサポート」「創造性の向上」の4点になるという。ここではまず、アプリケーションの使い勝手を左右するユーザーインタフェースの進化から紹介していこう。
作業環境に合わせてカスタマイズできるユーザーインタフェース
InDesign CS3を起動してまず目に付くのがユーザーインタフェースの変更。Windows VistaのAeroやMac OS XのAquaインタフェースに合った半透明なパレット類は、作業スペースに合わせて大きさを自由にカスタマイズが可能だ。
とかく作業スペースを圧迫するパレットの大きさもアイコンサイズまで小さくすることができるし(「アイコンパネル」と呼ばれる)、究極はTabキーでパレット類をすべて隠し、左右の端に現れるグレーのボーダー上でマウスカーソルを保持して必要なときだけパレットを表示させることもできる。使いたい機能のアイコンをクリックすればパレットが表示される仕組みなので、いつの間にかデスクトップがパレットだらけになってしまうこともない。
もちろん、キーボード・ショートカットもカスタマイズできるし、メニューそのものも表示 / 非表示を変更可能。さらには、頻繁に使う部分に色を付けてハイライト表示にすることもできる。必要のない機能を非表示にできるのはユニークだ。
また、色を付けて強調表示を行う機能を利用して、出荷時にはCS3での新機能を強調するワークスペースや、プリプレス作業(おもに校正と印刷)でよく使う機能を強調したワークスペースがデフォルトで用意されている。はじめて使う前に確認しておくと新機能を把握しやすい。
さらにページパネルでは、内容をサムネイル表示するようになった(アイコンサイズは変更可能)。表示パフォーマンスはプラットフォームに依存するが、ページ数の多いドキュメントでは直感的に目的の場所へ移動できるだろう。
ファイル配置からスタイル適用までもスムーズに
複数ファイルの配置を旧バージョン「InDesign CS2」で行う場合、Adobe Bridgeからドラッグ&ドロップすると上 / 左が約3mmの間隔でスタックの配置がされていた。InDesign CS3では、複数の異なる形式のファイルを同時に読み込み、サムネイル表示を見ながらそれぞれの場所に1つずつ配置することができるようになっている。
例えば、画像データならサムネイルが、テキストデータならテキスト頭部分が表示されるといった具合だ。しかも矢印キーの上と下を押せば複数の素材の中から必要な写真を選び出せる。これであれば、ページ内にレイアウトする画像を一気に読み込み、配置することができる。
また、InDesignデータも直接読み込み、配置可能になった。配置されたInDesignデータはリンクファイルとして扱われるためテキスト編集などはできないが、元ファイルを編集すれば、他の画像データと同様リンクの更新で最新状態にできる。
配置した後は、オブジェクトスタイルに割り当てる「調整オプション」を活用したい。これで、画像を配置してから行うトリミングやフレームの調整動作を決定しておけば、面倒な工程も軽減する。
続けて、大量に作ったスタイルの中から適用したいスタイルを見つけるときに便利なのが「クイック適用」だ。この機能を利用すると、段落、文字、オブジェクト用として作成したスタイルはもちろん、メニュー内容すべての機能にキーワード入力でアクセスできる。 例えば「キャプション」と入力すればキャプション用に作成した段落スタイルが検索され、「ページ」と入力すればメニュー内にあるページ関連機能がすべて表示される仕組みになっている。「あれ、あの機能どこいったっけ?」というとき、メニューを一つ一つ開いて確認する必要もないため、いざというときの対処法として覚えておきたい。なお、メニュー内容すべてまでは検索しなくてOKという場合は、検索対象を編集できるので無用なものを外してしまうこともできる。
InDesignデータを配置する際の読み込みオプション。プレビューを見ながら配置ページを決定できるのはPDFファイルの読み込みと同様。トリミング位置などを決定するオプションがある |
「フレーム調整オプション」は、プレースホルダフレームに対して、トリミング量や揃えの基準点、配置したときにフレームをどうするか、の3点を設定できる。画像データを配置した際の倍率指定まではできないのが残念 |
「クイック適用」はコントロールパネル内にある稲妻マークが目印。パレット類からもアクセスできる |
検索したい内容を入力して表示されたメニューをクリックすれば、すぐに目的の機能にたどり着ける。スタイルの場合は、そのままクリックすればスタイル適用が可能 |
ワープロソフトのような「箇条書き」機能
論文やマニュアルなどで多用するものに箇条書きがある。InDesign CS3に搭載された「箇条書き」機能は、リストタイプに自動番号か記号を選択し、位置を決定するだけで改行時に1.2.3.~などと番号を自動で振る機能だ。インデント設定も行え、使い勝手はWordやPowerPointのような感覚。改行をすれば自動的に自動番号も追従して増減するため、厳密なルールに則ってテキストを流し込む際に便利だろう。
挿入する値には、番号や記号だけでなく、任意の文字も組み合わせて指定できる。うまく使えば章立てを要する書籍の目次作りなどにも活用できそうだ。
ただし、箇条書き機能を適用した自動番号は編集できない。この場合は、解除したい段落が入ったテキストボックスを選択し、コンテクストメニュー(Windowsでは右クリック)にある「番号付けをテキストに変換」を実行すると、自動番号が通常のテキストに変わり、自由に編集できるようになる。
テキスト周りでもう一つ、便利になったのが「字形」パレット。OpenTypeフォント使用時に異体字や特殊記号を字形パレットで選ぶ際、過去に選んだ履歴も選択対象として残せるようになった。小ネタ過ぎるかもしれないが、字形パレットを常用するユーザーにとっては願ってもない機能強化といえる。頻繁に使う異体字や記号を登録することなく、履歴からすぐにアクセスできる。ただし注意したいのは、履歴として残っている字形に文字属性も含まれていると言うこと。異なる書体の場合、あらためて「選択された文字の異体字を表示」などで探す必要がある。