冒頭から山口教授は、すべてのビジネスプロセスがITの上で駆動していることをコメントしているが、ここでこれが大きな問題になる。以前までは、どの業務でも作業が似通う会計処理や人事管理といった部分でしかコンピュータが使われてこなかったが、現在はその組織のビジネスノウハウがそのままIT化したことで、合理的に問題を解決するためのサイクルを、SIerなどのコンピュータの専門家ではなく、実際にビジネスを行っているその組織自体でリスクマネジメントをする必要があるのだと指摘する。
経営者が、「ITが分からないから専門家に任せている」というような会社は「そろそろダメだと思う」と山口教授。今や情報通信がどこにでも進出している中で、経営者がその組織のビジネスノウハウを知らない専門家に丸投げするようでは、「危なくて仕方がない」と指摘する。
これらをふまえて山口教授は、「まじめな再検討が必要」と力説、すべての関係者が関与して、どのようにシステムが動いているのか見直す必要性を訴える。情報システムの問題がビジネス全体の問題になっている現状で、何が現在の問題なのかをきちんと把握する機能が求められている。ITの専門家に任せているようではいけない、というのが山口教授の主張だ。
また、責任の所在の明確化も必要だ。これまで、組織のIT部門がシステムを管理していたが、ITの問題がビジネスプロセスに直結している中で、経営者がITに関するオペレーションについて責任を持つべきなのだという。今までIT部門がすべてを担ってきたため、IT部門からはシステムのオペレーションに関する権限が奪われたと「大騒ぎしている連中がたくさんいる」(同)が、これは状況の変化に伴って指揮系統が組み替えられたのであり、IT部門がすべてまかなうのではなく、いわば「幕僚機能になる」(同)ことで経営者を支える立場になる。
山口教授は、「チームプレーでやっていくしかない」と強調する。ビジネスとITが直結した現在、リスクも、システムの作り方も変化した。今までとは変わっているのだから「新しいことを学んで、新しいシステムを作っていく」(同)ことが必要になっている。「今から学べばいい。スタートラインは一緒。うまく(新しい環境に)乗って、先に行くことが大事」(同)。