デジタルエクスペリエンスを向上するサービスを展開するゼットスケーラー
コロナ禍や働き方改革といった世の中の大きな変化を受けて、リモートワークが一気に普及することとなった。そしてこれに伴い、多くの企業がクラウドシフトを推進しているが、ここで課題となるのが、従業員がストレスなく、安全かつ快適に利用できるIT環境をどう実現するかである。とりわけMicrosoft TeamsやZoomなどのコミュニケーションツールで問題が発生すると、生産性の低下だけでなく、顧客やパートナーとのビジネスにも大きな影響を及ぼしかねない。
そうしたなか、世界中の企業から注目を集めているのが、デジタルエクスペリエンスを向上するパフォーマンス監視サービスであるZscaler Digital Experience(ZDX)ソリューションである。このZDXを中心とした、ゼットスケーラー社のソリューションを紹介するイベント「ZscalerZDX No Interruptions」の日本向けの配信が、先日2021年11月18日に実施された。本稿ではそのイベント内容をダイジェストでお送りしたいと思う。
イベント冒頭では、ゼットスケーラー 日本・アジア地域統括シニアバイスプレジデントの金田博之氏が次のように挨拶を行った。
「ZDXは、セキュリティ向上とネットワーク管理の双方をサポートしており、お客様の声に耳を傾けながら、ユーザーがどこで作業しても組織間のコラボレーション・エクスペリエンスを得られるように、ゼロトラストエクスチェンジのコンセプトを元に開発しています。とりわけMicrosoft TeamsとZoomなどのUCaaSのパフォーマンスに関する深い洞察が得られるため、ユーザーがパフォーマンス低下に気付く前に問題を特定して修正する事ができます。各セッションやQ&Aを通じてぜひそのメリットを実感していただきたいと思います」(金田氏)
クラウド活用時にも問題箇所を迅速に特定し解決へと導くZDX
まず、ZscalerのCMO Chris Kozup氏がイベントの流れについて説明した後、ZscalerのCEOで会長兼創業者のJay Chaudhry氏を紹介した。
セッションの最初にJay氏は、2008年に創業したZscalerのこれまでの歴史を振り返った後、「デジタル・トランスフォーメーションの推進によりSaaSやパブリッククラウド、モビリティの普及によって、セキュリティの考え方やネットワークの形が大きく変わりました。ここでは、ユーザーがいつでもどこからでも、シームレスかつ高速そしてセキュアに、信頼性の高いアクセスが行えるように求めているのです。しかしそのためには、従来の“城と塀”で囲ったセキュリティではパフォーマンスが遅すぎるなどの課題が多いため、もはや過去のものとなってしまいました。そこで、新たなセキュリティの概念である『ゼロトラスト』が、現在における基本となったのです」と強調した。
そうしたなか、ゼットスケーラーは毎年55~60%の勢いで成長しており、Fortune500社の約35%が自社のデジタル・トランスフォーメーションのセキュリティにZscalerを採用しているという。
ここでJay氏は、Zscalerのデジタルエクスペリエンスサービスの構築方法を紹介し、「主力サービスであるZDXと、Zscaler Internet Access(ZIA)、Zscaler Private Access(ZPA)により、世界各地にある150以上のデータセンターの1つに直接アクセスできます。この最短パスによって素晴らしい体験が得られるのです。当社のお客様もZIAを活用し満足されていますが、時には何らかの問題が発生することもあります」と語った。
顧客から寄せられる一般的な課題としては、Office 365の動作が遅いなどが挙げられるが、原因を特定するのは非常に困難だ。そこでZscalerは、アプリとユーザーの間にあるトラフィックパスに位置することで、実際の問題がネットワークの遅延によるものなのか、それともアプリの遅延によるものなのかなど特定し、エンドツーエンドのユーザーエクスペリエンスの改善を提供するのである。
こうした現象とその原因をピンポイントで突き止めることができるZDXは、たとえば特定のSaaSアプリで問題が生じた際に、そのアプリ自体で問題が起きているのか、もしくはパスのどこかでパケットロスが生じているのかなど、原因を明確にすることが可能だ。Jay氏は、そうしたケースを、画面のデモと事例を交えて解説した。
「問題の場所を特定することで、必要な対処法が明らかになります。ZDXのサービスは非常に速いペースで利用が拡大しており、四半期比200%も成長しています。非常に優れた拡張性を有すると同時に、非常に導入が簡単です。軽量エージェントがエンドポイントに既に配置されており、それを有効にするだけで導入が完了します」(Jay氏)
顧客があらゆるアプリを使って、どこからでも安全かつ迅速に信頼できるアクセスを行えることに注力しているZscalerでは、ZIAやZPAなどのコアサービスによって速やかにそれを実現する一方、ZDXで問題が発生している場所をピンポイントで特定することで、信頼できる体験も提供している。
「問題をすばやく解決できれば、ユーザーの満足という、お客様の目標の実現を支援できると信じています」とJay氏は力強く語って自身のセッションを締めくくった。
ZDXが提供するメリットの中でも特にCIOに役立つのは何か?という質問にJay氏は、「ユーザーエクスペリエンスがここ数年のCIOの最優先事項となっている。Zscalerであれば、エクスペリエンスをユーザー、拠点、会社それぞれのレベルで『ユーザーエクスペリエンススコア』として定量化できるため、有意義で貴重な情報が得られることでしょう」と語った。
次々と誕生するZDXのイノベーション
ゼットスケーラーが顧客の生産性を維持するという課題にどのように貢献するのかについて、ZscalerのVice President of Product Management Dhwal Sharma氏が登壇した。
Dhwal氏は、「我々は、世界中の150拠点を超えるデータセンターから最新鋭の技術を用いてユーザーに高速な接続性を提供しており、様々なサービスプロバイダーやアプリベンダーと直接ピアリングを行っています」と語った。
デジタルエクスペリエンスというのは、複数の要因によって形成され、そしてユーザーエクスペリエンスの悪化というのは、大きくネットワーキング、アプリケーション、エンドポイントの3つの要因のいずれかから生じることになる。
この問題に対処するために企業のIT部門が、エンドポイント監視ツール、ネットワーク監視ツール、APMサービスなど、サイロ化したモニタリング製品を導入しているものの、ほとんどのケースでは問題を共有できていない。しかも、セキュリティアーキテクチャーであるZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)では、アプリを従来の監視ツールからも見えなくしてしまうため、ユーザーエクスペリエンスの監視がさらに難しくなるのだ。
「こうした問題への解決策がZDXです。ゼットスケーラーは、グローバルに展開する大規模なクラウド環境からアプリケーション監視、ネットワーク分析、エンドポイント監視を行うことで、企業の包括的な監視ニーズを満たすことができます。もちろん、ユーザーやアプリの場所は関係ありません」(Dhwal氏)
現在、ゼットスケーラーでは、2500万を超えるエンドユーザーのエージェントから洞察を得ているという。そしてエンドユーザーエクスペリエンスをスコアリングフレームワークに変換しており、それはマイクロレベルで機能するユーザーデバイスから、組織全体、地域全体のマクロレベルまで効果を発揮する。このように全体を見渡しつつ具体的な問題の発見に役立つため、企業は問題発見のための時間を大幅に削減できるだけでなく、サポートチケットの発行数も削減可能となるのである。
その後Dhwal氏は従業員7万人を抱え、90カ国以上でビジネスを展開するSANOFI社の事例を紹介した。同社では、1週間という短期間の間にグローバルに展開し、実行可能なインサイトを得ることができている。その詳しい経緯については、イベント後半にSANOFIのグローバルコネクティビティ統括者であるMartias氏から語られた。
ZDXは、ZDXスコアによりCIOが生産性に関するより優れたインサイトを得て、障害を理解し、これを速やかに修正するよう支援し、平均修復時間を低下させる。同機関では、ZDXを導入したことで、NPS(Net Promoter Score)の枠組みで18ポイントの増加が見られたという。
現在、Zscalerは全世界で80億以上のテレメトリーデータポイントを分析しており、また208カ国の組織と従業員のデジタルエクスペリエンスを測定している。さらに、世界中に8000箇所以上の監視対象に対して、ユーザーエクスペリエンスのインサイトを引き続き拡大しているのである。
こうした体制下で、ZDXのイノベーションのペースは凄まじく、1年間で150以上の新機能をリリースしている。なかでもZoomやMicrosoft Teams、Microsoft 365のサービスとの優れたコラボ体験を実現する新たな強化機能により、大きくサービスを拡充しているのである。さらに、ServiceNowなどの主要ITSMパートナーとのエコシステムを拡大することで、分散型ワークスタイルのデジタルエクスペリエンスの向上にも貢献している。
「Microsoft TeamsやZoomといったSaaSアプリの“健康状態”及びエンドポイント側のパフォーマンスまでのネットワークパスを見ることができるので、たとえばユーザーデバイスのどのアプリがZoomミーティングのパフォーマンスに悪影響を及ぼしている可能性があるかなども速やかに突き止めることができます」と語ったDhwal氏は、企業向けMicrooft 365に関する新たなZDXライセンスについて、OutlookやOneDriveなどのMicrosoft 365サービスの包括的なデジタルエクスペリエンス監視が1つのパッケージになったものだと説明した。
さらにゼットスケーラーでは、ServiceNowのITSMとITOM製品でパートナーエコシステムとの提携について紹介し、セッションを終了した。
その後Chris氏は、セッションの後にDwarf氏に対する質問も取り上げた。
ZDXがFedRAMPサイトでいつ利用可能になるか?という質問対して、「2022年の前半には実現することを目標に積極的に取り組んでいる」とし、ZscalerはZDXのライセンスを購入していなくてもZscaler Client Connectorを使用し全ユーザーからZDXデータを収集しているのか、という質問には、「当社では組織内でZDXのライセンスが有効な場合にのみ該当データを収集します。ZDX機能はライセンス数に応じてエージェント上で有効になり、IT部門は対象組織などをコントロールできます」と回答した。
他にも、SASEやSSEへのサポート、ZPAのサポート時期、個人情報保護の取り組みに関する質問に対し、Dhwal氏はそれぞれ非常に前向きな回答を行った。
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