日本が生んだ世界的ビッグスター・ゴジラと、アメリカが誇る巨大モンスターの最高峰・キングコング。怪獣映画界最高のライバル同士の“二度目”の直接対決が、ついに実現する。果たして勝利を収めるのはどちらか――。
レジェンダリー・ピクチャーズ制作の大怪獣映画『ゴジラvsコング』は、アメリカをはじめ世界各国で上映されると、たちまち大ヒットを記録。ゴジラの故郷・日本での公開に向け、日本の怪獣ファンの間でも「ゴジラが勝つか、キングコングが勝つか!?」と盛り上がってきているようだ。
7月2日には、映画『ゴジラvsコング』の日本公開を記念して、BANDAI SPIRITSより「一番くじ ゴジラvsコング」が登場する。ヘッドマグネット、タオル、ポスターなどさまざまなアイテムがあるなかで、特に注目したいのは、全高約20cmの超リアルなゴジラフィギュア・「A賞 SOFVICS GODZILLA」だ。造形・彩色を務めたのは、「ゴジラ造形の第一人者」として有名な、原型師の酒井ゆうじ氏。
今回は酒井氏にオンラインでのインタビューを敢行し、「一番くじ ゴジラvsコング A 賞 SOFVICS GODZILLA」を制作するにあたっての裏話や、ゴジラフィギュアを隅々まで楽しんでもらうための“こだわり”ポイント、そして日本だけでなく世界中の人々から愛されるゴジラの魅力について、熱く語っていただいた。
― プロフィール ―
1958年福島県生まれ。マスプロ商品の原型を数多く手掛けながら、自ら主宰する「有限会社酒井ゆうじ造型工房」から数多くの名作ゴジラ作品をリリースし続けているゴジラ造形の第一人者。
東宝映画『ヤマトタケル』、『ゴジラVSデストロイア』、『ゴジラ2000ミレニアム』では映画スタッフとして参加。怪獣造形監修を務めた「円谷英二ミュージーアム」では、初代ゴジラの着ぐるみサイズの立像の原型制作と造形監修を手掛け、現存しない初代ゴジラのスーツを再現するなど模型造形に留まらない活躍をしている。
「ゴジラの目線の先に、コングの姿を感じてほしい」 - 表皮のモールドの数まで精密に再現
――酒井さんがレジェンダリー・ピクチャーズの『GODZILLA』シリーズのゴジラを作られるのは、『GODZILLA』(2014年)、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)に続いて3度目になりますね。私たち日本人がよく知る従来のゴジラ(東宝版)と比べると、レジェンダリー版のゴジラはずいぶん印象が異なりますが、酒井さんとしてはいかがですか?
レジェンダリーのゴジラが、日本で作られてきたゴジラとは意識的にデザインを変えているのは明らかですね。独特なリアリティを追求し、恐竜に近いスタイルを持っています。私はすべてのゴジラに等しく愛情を持っていますので、「これもまたゴジラである」と思いながら造形に取り組んでいました。
――「一番くじ ゴジラvsコング A賞 SOFVICS GODZILLA」の造形についてはどのような経緯で行われたのですか?
対コング戦のゴジラフィギュアを作る、というお話をいただいたのは、2019年の6月ごろでした。その段階ではまだ『ゴジラvsコング』の予告編映像などは出ていなかったのですが、「ゴジラの造形は前作『キング・オブ・モンスターズ』版と同じ」だと聞いていました。そこで『キング・オブ・モンスターズ』版のゴジラの資料を豊富にいただき、全体のプロポーションや表皮の細かいディテールなどをじっくり研究しました。
まずは資料をもとにデザインスケッチを描くのですが、初めから「キングコングが出る」ことが分かっていたので、ゴジラとキングコングが互いに向き合う構図を想定してデザインしたんです。原型に着手した後、「特報」映像が公開されて“船上でゴジラにパンチをくらわすコング”というシーンを目にし、イメージと近かったので安心しました。
――あのシーンは衝撃でしたね。
特報のあとで公開された予告編では、コングに殴られたゴジラが、コングを殴り返していますよね。特報だとゴジラがガツーンと殴られっぱなしでちょっと嫌だったのですが、ちゃんと反撃していたんだ、と嬉しく思いました(笑)。
――今回のフィギュアのポージングについて、こだわりポイントを教えてください。
今回の一番くじではゴジラフィギュアのみに携わりましたが、手にされたお客様に『ゴジラvsコング』の迫力が伝わるよう“対決”を意識してポージングを作っています。
BANDAI SPIRITSさんからいただいた資料をもとに、細かいところまでこだわって造形しています。
――フィギュアを入手された方には、どういった部分に注目してもらいたいですか?
頭のてっぺんから尻尾の先までのラインを意識して、全体のシルエットが美しくなるよう努めていますので、まずそこに注目していただきたいです。表皮のモールドについても精密に再現したので、その細かなディテールを見て、触れてほしいですね。もものあたりをご覧になればよく分かるはずですが、特徴的な体のヒダの位置や数をちゃんと合わせているんです。『キング・オブ・モンスターズ』のときにドハティ監督がこだわられたという、初代『ゴジラ』(1954年)を思わせる形状の“背びれ”も資料に忠実に作っています。生物的な口の中を再現するのも大変でしたし……。
今回は資料が豊富にそろっていましたので、それを活かして細かいところまでこだわって仕上げたいと思っていました。そうするとどうしても時間がかかってしまうのですが、緊急事態宣言や『ゴジラvsコング』の世界公開日の延期もあり、なんとか期日までに形になったかな、と安堵しています。
――彩色についてのポイントはいかがですか?
色についても、「ゴジラの精密なモールドを強調したい、表面の質感を出したい」という思いで取り組みました。お腹や股のあたり、足の裏、ふくらはぎなどはあえて明るめの塗装にして、その上から暗めのドライブラシを入れ、皮膚の凹凸を際立たせるなど、各部分にさまざまな塗装テクニックを用いています。出来上がった製品は、とても再現度の高いものになっていると思いますね。
――腕の角度やヒダの場所・数まで忠実に再現するというのは、ものすごいこだわりですね。
そうですね。そこまでやっておかないと「原型」としてお出ししてはいけない、と考えています。今回は、全体のシルエットを監修してもらうための粘土原型、細かなディテールを加えた最終原型、2タイプの彩色原型と、それぞれの段階で監修を受けたのですが、そのすべてがNGやリテイクが出なかったんです。BANDAI SPIRITSの担当の方も頑張って下さり、ありがたかったですね。
――一番くじの「ラストワン賞 SOFVICS GODZILLA バーニングカラーver.」として、A賞の彩色を変えたバージョンも出るそうですね。『キング・オブ・モンスターズ』での「核エネルギー暴走」をイメージした、赤熱化したゴジラになるとのこと。こちらについてのお話もお聞かせください。
A賞のゴジラとポーズは同じですが、真っ赤に燃えるようなゴジラのカラーリングを定めるのに、かなり時間がかかりました。背びれは透明な素材になっていて、明かりに透かすことによって“発光”しているイメージが得られます。体表についてもメタリック系の塗料を用いたりして、できる限りゴジラの体内でエネルギーが熱く煮えたぎるような雰囲気が出せるように、気を配りました。
――商品見本を拝見していると、まるでゴジラの目の前にコングがいて、今にもつかみかかっていきそうな闘争心を感じます。
まさに、今回のゴジラフィギュアを手にされた方が、ゴジラの目線の先にコングの存在を感じてくれれば嬉しいと思っているんですよ。ゴジラは日本を代表する怪獣ですが、キングコングはアメリカが生んだ偉大なるモンスターでしょう。よきライバルがいるからこそゴジラに魅力が生まれるので、映画『ゴジラvsコング』の日本公開もすごく楽しみにしています。