使用条件確認:
OCメモリが使えるCPUとマザーボード(チップセット)を確認

最近はよほど相性が悪くないかぎり、OCメモリを使ってPCが起動しないということはない。この点は安心してほしい。OCメモリ内にはその製品がサポートする最大クロックのほかに、DDR4-2400やDDR4-2666といった問題なく起動するだろうという動作モードも格納されているからだ。

  • CPU-Z SPD
    DDR4-3200対応のSP008GXLZU320BSBだが、DDR4-2400の動作モードも内蔵していて初回起動時には安全をとってDDR4-2400側が適用される

また、最初から高クロックで動作させるわけではなく、一般的にはメモリ交換時にOCメモリを挿した後、BIOSセットアップからその製品の正しいクロックを設定する。

ただし、OCメモリを使ううえで注意しておきたいことがある。CPUとマザーボード(チップセット)だ。中にはオーバークロックに対応していないものがある。

例えばIntelのメインストリームプラットフォームなら、製品末尾に「K」の付かないCPUや、「Z」の付かないチップセットだと、OCメモリを挿してもDDR4-2400やDDR4-2666を超えたクロックでは動作させられない。

現在使用しているPCのスペックを理解している方は、まずこれを確認しよう。もし忘れてしまった場合は、CPU-Zなどのハードウェア情報を表示してくれるユーティリティを使うことで確認できる。

  • Intelのメインストリームプラットフォームでは、CPUに「K」が付き、チップセットに「Z」が付くことを要チェック

さて、自作PCや自作PCがベースのショップブランドPCなら、ここまでの条件をクリアしていればまずOK。ところがいわゆる大手メーカーの完成PCの場合は製品サポートの観点、また小型PCなどの場合は熱設計の観点から、条件を満たしていてもメモリのOCができない製品もある。メモリのOCを楽しめるのは、基本的に自作ベースのPCだけと覚えておくのがよいだろう。

そのほか、マザーボードがサポートするOCメモリの最大クロックも、マザーボード製品サイトで確認しておくのがよい。マザーボードによってはDDR4-3600まで、DDR4-4133まで、と云うように対応する範囲が異なる。

基本的にハイスペックなPCほど高いクロックをサポートしていると思ってよい。サポート外の高クロックなOCメモリも、挿してみたら動くということもある。ただし、これはサポート外なので自己責任だ。

続いては、OCメモリをメモリスロットに挿す時の注意点を紹介しよう。

設置方法:コツをつかめばメモリ交換は怖くない

メモリの交換はそこまで難しいものではない。ただし、ちゃんとコツをつかめばよりカンタンだ。

まずメモリスロットをよく見てみよう。長いスロットの両端あるいは片方にメモリを固定している「ラッチ」があるはずだ。このラッチを開けば、挿されているメモリのロックが外れ、メモリがスッと軽く浮く。しっかりロックが外れたことを確認し、この状態でメモリを引き抜き、交換する。

  • ラッチ2つ
    メモリスロットのラッチ(左)。中にはラッチのないもの(右)もある

両側にラッチがあるスロットでは、メモリをマザーボードと水平に挿し込んでいけば間違いない。スロットは案外硬く、意外なほど力を入れる必要があるが、ラッチの動きを目安に挿し込もう。

最近ではラッチが片側にしかないものもある。その場合は、ラッチのない側にまずメモリを斜めにしっかり奥まで挿し入れ、次にラッチ側を挿し込んでいく具合だ。先ほどは水平、この場合は片方ずつと、手順が違うので注意しよう。

  • 両ラッチ
    両端にラッチがあるスロットでは、ラッチを開いた状態でメモリを上から均等に挿し込んでいく

  • 片ラッチ
    片方しかラッチのないスロットでは、先にラッチのない側にメモリを挿し、次にラッチのある側にも挿していく。少し斜めの状態で先にラッチのない側が、次にラッチのある側が底に着くイメージ

ちなみに、交換したメモリを挿し込めば、しっかり奥まで挿したところで自動的にラッチが閉じて「カチッ」と音がする。たまに半ロックとなる時もあるので、しっかりロック状態を確認しておこう。

メモリをスロットに挿し込む時に注意するのは、メモリの切り欠きの位置。よく見ると、切り欠きは中央ではなく少しズレた位置にある。DDR4より以前はDDR3やDDR2があったように、メモリにはさまざまな規格がある。誤って違う規格のメモリを挿さないための切り欠きだ。まずはスロットをよく見て、上下どちらが短く、どちらが長いかを確認し、それに合わせてメモリを挿し込んでいこう。

また、現在のPCメモリは、「デュアルチャネル」というモードで動作する。これが何を意味するのかと言うと、要は「メモリを2枚束ねて2倍速にしよう」ということ。メモリ自体が2枚、4枚、8枚と、2の倍数で販売されていることが多いのはこのためだ。

正しいスロットに挿せば「デュアルチャネルモード」で動作し問題ないが、間違ったスロットに挿すと「シングルチャネルモード」で動作し、性能が出しきれない場合がある。

4本のスロットに2枚のメモリを挿すような場合は、基本的にマザーボードの説明書に記載があるのでそれを確認するのがよい。その上で、メモリを挿した後、先でも紹介したCPU-Zなどのユーティリティを用いてデュアルチャネルで動作しているのか確認しよう。

  • CPU-Z メモリ
    CPU-Zからデュアルチャネルモードで動いているかを確認。シングルチャネルモードで動いている場合は「Single」と表示されるので挿し直し

ただ、PCを譲り受けたり、説明書を捨ててしまったりといった場合もあるだろう。いろいろな組み合わせを試せば成功にたどり着く。ただし、ここ5年くらいのマザーボードなら、1枚目のメモリを挿したら、もう1枚は一つスロットを空けて挿せばデュアルチャネルモードになるのが一般的だ。ここを覚えておけば、ひと手間減らせる。

  • 2枚挿し
    4本のスロットに2枚のメモリを挿す場合は、1スロット間隔を空けて挿せばデュアルチャネルモードとなるのが最近のマザーボードの傾向だ

設定方法:挿したあとはBIOSセットアップで設定を

メモリを挿し終わって最初に電源を入れる時は、BIOS(UEFI)設定を行なう必要がある。一般的に電源ボタンを押した直後からキーボードの「DEL」や、マザーボードによっては「F1」や「F2」キーを押すことでBIOS設定画面が表示される。

英語で表示されるBIOS画面が怖いと思っている方も大丈夫。最近のマザーボードなら1箇所設定するだけでよい。それも「XMP」という一つのキーワードで見つけることができる。「XMP」は、そのOCメモリがサポートするOC設定のプロファイルだ。

さて、BIOS画面の設定項目は同じメーカーのみならずマザーボードによっても異なる。そのため、ここではASRockのZ390 Taichiを例に、設定方法を紹介しよう。

Z390 Taichiの場合、BIOSの最初に表示される画面にメモリのアイコンとともに「DRAM Infomation」があり、その下に「XMP Profile」がある。この「XMP」が設定すべき項目だ。

  • BIOS画面
    BIOS画面からメモリに関係する部分をあたり、XMPという項目を探し出す

下のスクリーンショットは、初回起動時のものだ。XMP Profileは「Auto」になっており、その上のメモリ情報にはSilicon Power 8GB(2400)と表示されている。つまりDDR4-2400で動作していることが分かる。

これをDDR4-3200で動作させたい場合は、「Auto」の部分を「Profile 1」に変更すればよい。そして「ESC」キーを押してBIOS画面を閉じる際、設定を保存するかどうかの確認が表示されるので保存「Enter」キーを押してPCを再起動する。これでBIOS設定作業はおしまい。

ここまで何回か紹介してきたが、再度CPU-Zなどのユーティリティを用い、DDR4-3200で動作しているのかを確認すれば完了だ。

  • XMP Profileを「Profile 1」に変更し保存すればOKだ

  • CPU-Z メモリ
    再起動後にCPU-Zなどで確認すれば間違いない

検証&検証結果:
メモリの転送速度アップはもちろん、CPU性能やゲームのフレームレートもアップする

では最後にOCメモリの効果の検証だ。スタンダードなメモリ(DDR4-2666)からゲーミングメモリ(XPOWER Turbine RGB DDR4-3200)に交換するとPCはどう変わるのか。

冒頭で言及したとおり、メモリを換えたからといって性能が劇的に向上するというわけではないが、用途によって交換の効果がでてくる。ベンチマークテストの種類によっては、それほど違いが見えないこともある。さらに計測時の誤差も考慮する必要があるので、基本的には1回テストしてOKではなく、3回のスコアを平均化している。

また、ベンチマーク環境としては、最後の「統合GPUテスト」以外のものはグラフィックスカード(GeForce GTX 1080 Ti)を装着した状態でテストした。CPUはすべてIntel Core i9-9900Kである。

それではまず、メモリの性能がどれだけ向上するのかを確認する。メモリとCPU間の転送速度を測るSiSoftwareのSandra 2018 SP4を用い、Memory Bandwidth(メモリ帯域幅)テストを実行した。

  • Sandra 2018 SP4 - Memory Bandwidth

グラフのとおり、DDR4-2666をDDR4-3200にアップグレードすることで、速度は26GB/s台から30GB/s台へと向上する。素直にクロックの差が出た形だ。

CPU性能に違いはでるだろうか。そこでCINEBENCH R15とR20を試してみた。

  • CINEBENCH R15

  • CINEBENCH R20

グラフのとおり、すべてDDR4-3200のほうが高い値だ。Single CPU(1スレッド)についてはDDR4-3200の差は小さいが、Multi CPU(マルチスレッド)における差は明確だ。それも3回計測した結果を平均し、さらに2つのバージョンで試しているのでOCメモリの効果があったと断言できるだろう。

マルチスレッド時は、今回用いたCore i9-9900Kの場合、16スレッドが同時にメモリからデータを呼び出して計算を行ない、そしてメモリに書き戻している。メモリのアクセス頻度が高いため、SandraのMemory Bandwidthの結果のとおり、より高速なDDR4-3200なら同じ処理でもメモリの読み書きがわずかに短時間で済む。シングルスレッドはその1/16くらい。

ゲームにおける性能向上は……?

ではゲームにおける性能向上はあるだろうか。統合GPUを利用したWorld of Tanks enCoreで見ていこう。

  • World of Tanks enCore

試した設定は2つ。1つは高解像度・高めの画質で、もう1つは低解像度・低めの画質だ。計測したすべてのパターンで、DDR4-3200のほうがよいスコアを示している。

3Dではテクスチャや頂点といったデータを、CPUがストレージから呼び出しメモリに展開、メモリ上のデータをGPUが処理して再びメモリに書き戻すといった処理が行われる。

高解像度・高めの画質パターンではGPUの負荷が高い。CPUがメモリに展開する時間は十分に速くても、GPUがその処理を行う方に時間がかかり、その間CPUは待ちの状態に陥っていると考えられる。 先のCINEBENCHの結果のとおり、OCメモリを使うことでCPU性能が向上するが、CPUが待ちの状態が長く続くと、性能の向上分が活かせない。逆に1280x720/軽量品質では、GPUとCPUどちらも待ちが少ない状態になり、明確にスコアが上がるのだ。

また統合GPUは(本来グラフィックスカード上にある)ビデオメモリの代わりにメインメモリを利用する。 メインメモリがGPUの一部のように振る舞うわけで、高速なメモリであるほど性能を引き出せる。そのため、2つの設定のどちらもしっかり向上するわけだ。

ここで紹介したゲームベンチマークは、平均フレームレートを基にスコアを出している。スコアが高いということはフレームレートが高い。つまりゲーム映像がスムーズだということだ。その意味でも、OCメモリはゲームに効果的なのである。

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コスト重視ならケチってしまいがちなメモリも、良いものを選べば見た目も性能もアップする。PCのパーツ交換と言うと、難しい印象をお持ちの方もいるかもしれないが、これを参考にしてチャレンジして欲しい。

自動車やバイクにこだわるように、PCもこだわってみると個性が出る。そしてメモリの交換はそれほど難しくなく、自分でもできる範囲だ。XPOWER Turbine RGBなら、初めてのカスタムにぴったりの選択と言えるだろう。


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