日本の電力事情を支え続けてきたJ-POWER(電源開発株式会社)。同社が持つ高い技術力やノウハウは日本だけでなく、世界中から注目を集めている。現在、タイをはじめとしたアジアや米国など、海外での発電所建設・運営といった発電ビジネスに積極的に取り組んでいるほか、半世紀以上にわたり国際協力機構(JICA)や外国政府機関、民間企業の委託を受けて、発展途上国をはじめとした世界各国で技術協力に関するコンサルティング事業を積み重ねてきた。

そんなJ-POWERの事業について、まずはマンガで紹介していこう。

以上、マンガでJ-POWERについて解説してきたが、星君と源君ももっと知りたいと言っていた海外事業について、今回は2020年の稼働を目指して建設工事が佳境を迎えている、インドネシアの「セントラルジャワIPPプロジェクト(以降、CJプロジェクト)」に注目してみたいと思う。このプロジェクトは、J-POWERが伊藤忠商事株式会社とPT.ADARO POWERと共同で進めているものだ。今回は、現地の最前線で働く兼子さんと、日本からプロジェクトをバックアップする加藤さんに、海外での大規模プロジェクトに携わる難しさや楽しさ、やりがいなどについて伺ってみたので紹介しよう。

国際社会に貢献できるやりがいのある職場

――兼子さんは、CJプロジェクトではどのような業務をご担当されているのですか?また、今回のプロジェクトの特長をお聞かせください。

兼子氏:「私はJ-POWERから今回のプロジェクトのために設立されたPT.BHIMASENA POWER INDONESIA(以降、BPI)という会社へ出向して現地で工程や安全・品質を管理する『施工管理』の業務をメインに仕事をしています。

今回のプロジェクトでは、インドネシアのIPP(独立系発電事業者)としては最大規模となる石炭火力発電所の建設が行われています。インドネシアは石炭産出国でもあるため、このエネルギー源を使えば電力コストを下げられ、国民の生活や経済に貢献できる。また、超々臨界圧(USC)という高効率発電技術や環境対策設備といった『クリーンコール技術』を適用することで、環境への影響をできるだけ削減することを目指しています。この『クリーンコール技術』におけるトップランナーでもあるJ-POWERが大きな役割を担っています」

  • PT.BHIMASENA POWER INDONESIA Balance of Plant Manager,Elecrical & Mechanical Group 兼子 誠氏

――インドネシアと日本で仕事環境の違いなどを感じることはありますか?

兼子氏:「これはCJプロジェクトに限ったことではありませんが、全体を通して言えることはチャレンジングな取り組みであり、だからこそ楽しさややりがいがあるということです。

今回はインドネシアでの事業になりますが、ここはイスラム教の国ですから、文化や宗教観の違う人々と仕事をしていると、新たな発見を日々感じています。例えば、イスラム教では断食がありますが、断食の期間中にその多くがイスラム教徒であるローカルスタッフを前にのんびり昼食を摂ったり飲み物を飲んだりするわけにもいきません。また、当然体にも負担がかかっていますから、その時期は特に彼らの体調管理にしっかり留意しないといけないし、それを考慮した工程を作らないといけません」

  • 現場作業の工程管理をするグループ。合言葉は「ご安全に!」

――文化や言葉、宗教の違いはもう仕方ありませんよね。どのように調整するのですか?

兼子氏:「何よりも、相手を尊重する気持ちが大切だと思います。その国で正しいとされていることは否定せず、彼らのやり方に合わせた仕事の進め方を考えます。実は私も少しだけ断食を試してみましたが、ぜんぜん耐えられなかったです(笑)。でもそれで彼らの気持ちに少しでも寄り添えるのではと思っています。

また、『日本のやり方が絶対正しい』『当社のやり方が絶対優れている』といった考え方では仕事はうまく進みません。このプロジェクトを通じて、我々日本人スタッフも一緒に多くのことを学んでいます。お互い尊重し、受け入れる心をもつことが欠かせないと思っています」