CDPは従来のDMPと何が違うのか
データ統合をめぐる様々な課題について、クラウドベースで顧客データを統合管理できるCDP(カスタマーデータプラットフォーム)の活用が解決の有効な手段のひとつだが、実際のところCDPが従来のDMP(データマネジメントプラットフォーム)と何が違うのかについて、理解されていない部分も多いのではないだろうか。トレジャーデータ パートナーサクセスの岡野充浩氏は『マーケティングのデジタル化を支えるCDPと活用事例』と題した講演で、データマーケティング基盤「TREASURE CDP」の特徴を紹介しながら、CDPがデジタルマーケティングでどのような役割を果たすかを説明した。
2011年に米国シリコンバレーで日本人が創業したトレジャーデータは、大手企業をはじめ国内で約300社にデータマーケティング基盤を提供し、2018年2月の時点で累計約120兆件もの顧客データを管理しているという。なぜ、企業はCDPを求めるのか。その背景について岡野氏は「顧客の趣味嗜好や情報収集の手段、企業と消費者のタッチポイントが多様化するなかで、企業の視点からコミュニケーションを考えるのではなく、個客視点で考える時代へと転換しています」と説明。実際、化粧品大手の資生堂は個別の顧客ニーズに合わせたパーソナライゼーションを推進するため、3年間で約520億円をデジタル領域に投資すると表明しているとのことだ。
一方で、「チャネル横断型の"個客"管理ができていないため、データがサイロ化して同一の個客として理解できていないケースが少なくありません。CDPを活用し、この個客データを統合管理して一人ひとりの個客を理解することを、オムニチャネル戦略の第一歩にすべきです」と岡野氏は指摘している。
では、その基盤となるCDPはどのような役割を果たすのだろうか。トレジャーデータでCDPは、CRMやDMPの進化系として、顧客を理解するためのプラットフォームと位置づけているという。
これまでの顧客データ管理の歴史をたどると、CRMは顧客理解のために自社で保有するデータを管理する基盤として活用され、一方でDMP(パブリックDMP)は新規顧客を獲得するネット広告を最適化するために、非顧客データ(サードパーティデータ)を活用する基盤として普及してきた。これに対してCDPは「カスタマージャーニーを意識した広い範囲のデータを収集・統合し、"いま顧客が何を求めているのか"を深く理解して自社で永続的に管理するもの」で、DMPの進化系として位置づけられているという。
具体的に「TREASURE CDP」では、企業の既存システムに眠る顧客データをAPIによって収集し、DMPのデータ、サードパーティデータ、顧客の行動データ、気候や環境情報などを統合して顧客理解を深めていく。
「様々なデータを統合することによって、個客ごとの"カスタマーカルテ"を作成し、それに応じた適切なコミュニケーションが生み出せます。複数のウェブサイトにトレジャーデータのサードパーティCookieを発行するタグを埋め込むことで、アクセスしたユーザーごとにユニークなIDが付与されるため、ユーザの行動履歴をサイトを横断して把握できるようになります。個客が"いまどういう気持ちなのか"を理解することで、距離を縮められるわけです」(岡野氏)。
データ統合を目的としたシステムの導入にあたっては、システム部門とマーケティング部門の組織の壁によって円滑に作業が進まないことも多々あるが、岡野氏によると「TREASURE CDP」はデータ収集も容易に行え、メンテナンスも不要とのこと。システム部門への負荷が小さく、一方でマーケティング部門にとっても新たにデータを取得・整理する手間が大幅に軽減されることで、分析やプランニングなど本来の業務に注力できるという。
「分析に関しては機械学習を導入しており、購買した顧客データを教師データとして"次に購買しそうな人"をスコアリングする『予測リードスコアリング(購入予測モデル)』を提供しています。機会学習による予測の仕組みはブラックボックス化せず、その評価プロセスも確認できるのが特徴です」と岡野氏。これと同じ要領で、サービスを解約する可能性が高いユーザーを予測することも可能だとしている。
販売現場の接客をデジタルで変革するマーケティングオートメーション
CDPで顧客を深く理解したうえで、コミュニケーションを形にするために重要な役割を果たすのが、マーケティングオートメーションだ。SATORIの代表取締役である植山浩介氏が『デジタルとアナログを融合させたコミュニケーション最新事例』と題した講演のなかで、リアル店舗におけるコミュニケーションをデジタルによって変革した事例を紹介した。
マーケティングオートメーションというと、顧客のデータ分析とシナリオ設計に基づいて、顧客に対してダイレクトメールやスマホアプリのプッシュ通知などを行う仕組みをイメージするが、「SATORI」のアプローチはこれと大きく異なる。植山氏が「販売の現場で使われることにこだわっています」と述べた通り、リアルな店舗での接客をデジタルによって効率化することを目指しているのだという。
「きっかけは、アパレルメーカーに勤めていた知人の言葉です。店舗ではスタッフがお得意様に対して個別に手紙を書いたり、『LINE』で新入荷のお知らせを送ったりするケースがあります。本部から提供されるマーケティングツールでは現場のニーズが満たせず、そのため店舗ごとにスタッフからお客様と最適なタイミングで交流できる仕組みがほしいという声が寄せられていました。こうした販売現場のニーズに徹底的に寄り添いたいと思い、『SATORI』を開発・提供しています」(植山氏)
では、実際の現場で「SATORI」はどのように活用されているのだろうか。あるジュエリー販売店では、婚約・結婚指輪を購入した顧客が1年後にウェブサイトを来訪した際に、当時担当した接客担当者にメール通知する仕組みを導入した。これにより、担当者は来訪した顧客を的確にフォローしてエンゲージメントを深められるようになる。この仕組みでフォローした顧客は、その後も高い割合で店舗を再訪してくれているという。
「様々な業種で、"こんなコミュニケーションができれば気持ちいいのではないか"という販売現場の声があるはずです。そうした声を拾いあげて現場で使いやすいITを導入してほしいです」と語った。
[PR]提供:トレジャーデータ