IIJが4月から開始した「フルMVNOサービス」。キャリアから回線は借りるものの、自社でSIMカードを発行できるなど、独自性の高いサービスを提供できる、一歩進んだMVNOサービスだ。今回、訪日外国人観光客向けにIIJが開始したフルMVNOサービスの「JAPAN TRAVEL SIM」を入手したので、その使い勝手などを検証しよう。
フルMVNOのメリットは「SIMを自由に発行できること」
2016年ごろからMVNO関連のキーワードとしてしばしば話題に上がっていた「フルMVNO」。従来のMVNO(ライトMVNO)が、回線や基地局、顧客管理システム(HLR/HSS)などをキャリア(MNO)から借りていたのに対し、顧客管理システムや認証サーバ、コアネットワークなど、無線以外の部分の多くをMVNO側が用意するとともに、世界的に認められた移動体識別番号である、「MNC」(事業者番号)を持っているのがフルMVNOだ。
MNCを持つことで、MVNOは従来MNOから卸してもらっていたSIMカードを独自に発行できるようになる。これにより、2つのメリットが生まれる。1つめは、SIMカードの形状がこれまで以上に自由になり、組み込み型のSIMチップを含めた、さまざまな製品を販売できること。今回の「JAPAN TRAVEL SIM」でもこうした特徴を生かし、1枚で3種類のSIMサイズをカバーできるものが採用されている。
もう1つが、SIMの在庫コストを減らせる点だ。従来のMVNOだと「SIMの開通時からMNOからの料金が発生する」ためSIMを発行した時点からコストがかかっていたが、フルMVNO化を行うことで「SIMの開閉やプラン設定の自由に行える」ようになり、適切なタイミングで開通できるようになった結果、在庫の負担が軽減された。それがユーザーへの提供料金にも反映されたわけである。
実際のところ、ドコモ回線を使っている従来型のJAPAN TRAVEL SIMとフルMVNO型を比較すると、従来型が1GBで2,460円のところ、フルMVNOでは1.5GBで1,850円。2GBが3,780円のところ、フルMVNOで3GBで2,800円と、1GBあたりの単価はほぼ半額にまで安くなっている(ただし連続使用期間は短くなった)。フルMVNO化による低価格化の恩恵をわかりやすい形で実現しているのだ。