関数電卓でグラフを描画する意義
林:そのカラーグラフに加えて、最新機種の「fx-CG50」は3Dグラフも描けるんですよね。これは、どんなときに使うのでしょう? 私個人は3次元のグラフと聞くと、自然現象、特に波を表すようなイメージがあるのですが……。
櫻井氏:2次元で表現しきれないものですね。たとえば、理系の学生さんが必ず履修する「数IIIC」。これに2次曲線というものがあります。2次曲線自体には、円や楕円、あるいは放物線、双曲線があるのですが、これは元々、円錐の断面のことなんですよ。この断面の傾きが0(底面に対して水平)のときは円で、少しでも傾くと楕円になるんです。つまり、この断面に実は2次曲線の関数が隠れていることが、目で見てわかる。これは全世界の理系の学部で習う、数学の入り口なんです。
林:学生時代、積分をグラフで教えてくれた先生は、授業が解りやすかった記憶があります。
櫻井氏:そう思います。数式だけで変化をイメージするのは限界がありますよね。ご指摘の通り、積分でいえば「グラフの面積を求めるときに使うんだよ」と教えてから数式を見ると、より理解が深まっていくんです。それが関数電卓でグラフや図形を描画するメリットだと思います。
林:「fx-CG50」では、新機能「テンプレート機能」を搭載されたと聞きました。この機能について教えてください。
櫻井氏:はい。これはグラフ関数電卓初の機能で、テンプレートから3Dグラフを描けるものになります。まず「線」「平面」「球」「円柱」「円錐」のどれを描きたいかを選び、座標を入力することで、数式を覚えていなくとも3Dグラフが簡単に描けるのです。
櫻井氏:いきなり、「球のグラフを描きなさい」といわれても、球の数式はなんだっけ?と教科書とのにらめっこが始まってしまい、そこでつまづいてしまいます。それなら、テンプレートを用意すればいいんだと気づいたんです。あとは"a"や"b"に適当な数字を入れれば、それなりに描けてしまいます。こうしてまず描いてみて、じゃあ、この"a"の数字を変えてみたらどうなるのかな、というところを試していただきたいんです。
林:それはいい! 3Dグラフというと複雑そうに感じますが、このテンプレート機能がすごくハードルを下げてくれますね。
櫻井氏:これはぜひやりたいと、先生方にも意見をうかがった上で、製品企画の初期段階で開発陣の総意で搭載を決めました。取っ掛かりの難しさを解消することは、数学教育にとって、大切な要素です。テンプレート機能は、3Dグラフの入門者にとって非常に、価値のある機能だと考えています。
林:「回転体グラフ描画」もおもしろい機能ですね。
櫻井氏:実はこちらも業界初搭載の機能なんですが、教科書や試験問題に掲載されている回転体の図は、当然のことながら自分で回転させることはできないですよね? そこで、3Dグラフの描画機能だけでなく、回転体をきちんとグラフ化したものを表示できれば理解の促進に役立つ、と考えて搭載したんです。
櫻井氏:よく目にする設問で、関数式、たとえば「y=sin(x)」のグラフを描いて、x軸を中心に回転させたときの体積を答えなさい、というのがあります。が、それを挿絵で見ても実感が沸きません。だったら、実際に回転で表現してみようじゃないかと。「fx-CG50」では、それができます。
林:積分の問題ですね。これは確かに解りやすい。数学って、三角関数と積分が入ってくると、とたんに頭の中でイメージしにくくなるんですよね。
櫻井氏:林さんも、学生時代、この「sin(x)」を習ったと思います。それをx軸を中心にくるっと回転させたものですね。これはx軸でしか回転しないようになっていて、これが「y=sin(x)」に対して必ず全部回転させたらどう表現しますか、というのを描いています。
関数電卓で「数学を体験する」
さて、櫻井氏と林の理系男子(?)による関数談義はこの後しばらく続くのだが、文系出身の筆者では盛り上がりの勘所がつかめず、文系出身の方々にも引き続き読んでいただきたいので、次の話題に移ろう。
林:これらの新機能について、ユーザーの反応はいかがですか?
櫻井氏:おかげさまで好評です。新たにできることが増えると、今までやろうとしなかったことに対しても"じゃあ何ができるかな"と仰っていただけますし、数学を取り巻く環境が一歩前に進んだと感じています。
教育者の視点に立てば、全ての生徒に立体を理解してもらうというのは、なかなか難しいテーマで、教科書の図や黒板だけでは実感しづらい、という生徒さんもいらっしゃるわけです。そこで、それをわかりやすく表現できるツールが身近にあれば、そういった生徒さんも「じゃあ何か数値を入れてみようかな」となりますよね。
林:グラフ関数電卓を高校で使っているケースもあるんですか?
櫻井氏:もちろん、あります。中には、生徒さん自身が動いて、その位置や移動速度の変化をグラフ化することで、関数とは何かを実感させる授業などもあって、生徒さんにも好評と伺っています。
林:それは面白そうですね! 科学の実験はありますけど、数学の実験って、ほとんどないですよね。でも、関数電卓を使ってあれこれ試しながら考えると、それが経験になると思います。数式やグラフを操作して、その結果が変化することを体験できるって、素晴らしいことだと思います。
櫻井氏:私たちの思いも、まさにそれです。関数電卓って、技術者の方々が難しい計算をするために使うもの、というイメージがまだまだあると思います。でも、そうじゃなくて、数学をビジュアルで表現できる、数学をよりわかりやすくしてくれる身近なものなんだよ、と多くの人に伝えていきたいですね。
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