G-SHOCKの表面だけをコピーしてもダメ
――では続いて、デザインについてお話をお聞かせください。GZE-1は、G-SHOCKの他にもSFメカ的なデザインがカッコいい、と話題になっていますね。
神出氏:「ありがとうございます。ガンダムやアイアンマンのアークリアクター、あるいはスター・ウォーズの偵察メカ、レンズマンなど、色々なご感想をいただいています(笑)」
――デザインのモチーフはG-SHOCKということですが、これはもう決定事項としてデザインのお話が来たのですか?
神出氏:「始まりはFR200ベース、液晶モニターはなし、という条件で究極のタフネスカメラを作るという、内容でした。そこでまずは、究極のタフネス性能を実現するために、弊社の財産でもあるG-SHOCKのタフネス構造も含め参考にデザインしよう、という事でスタートしました。ただ、ひと口にG-SHOCKといっても色々ありますが、GZE-1ではG-SHOCKの『MASTER OF G(マスターオブ・ジー)』シリーズに代表される最新のG-SHOCKデザインルールやディテールを参考にしています。キーの操作のしやすさは、車のインパネなども参考にしました。G-SHOCKを基本に、カメラとしての使いやすさを追求する、というスタンスです。
デザインスケッチは、まるでSF映画の設定資料のよう。FR100やFR200に近いもの、それにバンパー(プロテクター)を装着した形など、思考の変遷が見える。「バンパーを外すと全天周撮影できる」というアイディアもユニーク。フック状のバーが標準装備されていたり、アタッチメントの装着方法が試行されていたりするのも興味深い |
なかでも、決定的瞬間を瞬時に切り出すために、ボタンの押しやすさには特にこだわっています。握った瞬間に指がボタンに導かれる様にバンパー形状を工夫しました。さらに、様々な部分にローレット加工を施す事で、グリップの実用性とハードなイメージを両立しました。GZE-1の本体が多角形なのは、この握りやすさやタフ性能を追求した結果なんです。ちなみに、G'z EYEのデザインワークでは、製品ロゴや専用アプリのデザインにも衝撃に強いハニカム構造をイメージし六角形を象徴的に使っています。実は、パッケージボックスまで六角形なんですよ」
――まさにG-SHOCKらしさが凝縮されたデザインですね。ちなみに、神出さんは、G-SHOCKのデザインを担当した経験があるのですか?
神出氏:「それが、G-SHOCKも含め、時計をデザインしたことはありません。普段はカメラや楽器を担当することが多いですね。カメラでは『TR』シリーズやキーボードなど。あと、タフネス系では、以前発売していた『G'z ONE』という携帯電話の北米向けモデルをデザインしたことがあります。
今回はG-SHOCKをデザインモチーフとしましたが、それゆえに悩んだ部分もあります。G-SHOCKの表面だけコピーしても良いものはできませんから。やはり根底にある"G-SHOCKはこうでなくてはならない"という哲学を理解しないと。そのために、G-SHOCKの担当デザイナーから話を聞き、カメラのデザインに落とし込んでいきました。すると、上辺をなぞらなくても、結果的にG-SHOCKの形になるんです」
――ただ、時計とカメラでは機械的な構造がまったく違いますよね。
神出氏:「そうです。たとえば、G-SHOCKの特徴的なバンパーの考え方をカメラに応用できないかと考えたのですが、カメラは中央にレンズがあります。しかも、動画で170.4°、静止画で190.8°という超広角レンズなので、ドーム状に飛び出している。これを守るバンパー構成を考えました。発表会でも紹介していた、全方向カバリング構造です。
レンズを守るためにバンパーをかなり前に出す必要があるのですが、この加減が難しい。出しすぎるとケラレ(バンパーが写真に写り込み、風景や被写体が隠れる)が出てしまいます。センサーが横長の長方形なので、左右のバンパーは特に写り込みやすい。設計部門から画角データをもらって、(バンパーを)どこまで前に出せるかシミュレーションしながら、ミリ単位で調整していきました。
また、バンパーの先端を面取りして飛び出しをあまり感じさせないデザインにしているのですが、それによって強度が損なわれないようにも配慮しています。他にも、パーツを分割したり、スリットを入れたりして、本体の厚みを意識させないよう演出するなどしていますね」
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後編では、高山氏を混じえ「GZE-1」のタフネス性能の秘密や、世界観を踏襲したスマホアプリについて、より深く掘り下げているので、そちらも合わせて読んでいただきたい。
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