G-SHOCKの"可能性"への挑戦
さて、ここからは、G-SHOCK一億本出荷記念式典の終了後、増田氏への単独インタビューを実施できたので、その模様をお届けする。
――まずは、この累計出荷「1億本」という数字をどのように受け止めていますか。
増田氏:「正直、莫大すぎてイメージが湧きませんね(笑)。販売を開始した当時は、こんなに大きなブランドになるなんて夢にも思いませんでしたし……。でも、出荷数という意味では、生産計画と現在年間700~800万本という出荷実績がありますから、何年後に1億本を超える、という予測はできていました」
――その予測と比べて、1億本達成の日が来たのは早かったでしょうか、それとも遅かったのでしょうか。
増田氏:「1年ほど遅かったかな、という気はします。ここ10年は出荷個数の伸び率が特に大きかったんですよ。10年以上前にはなりますが、2004年からデジタル中心だったラインナップをコンビモデル、アナログモデルを強化して拡充を図っていますし、2008年からはブランドの世界観をワールドワイドに伝えるストリートカルチャーイベント『SHOCK THE WORLD』をスタートさせ、国内だけでなく海外でも非常に注目を集めました。販売エリアが一気に広がったのは、大きかったと思います」
――次は2億本ですね。
増田氏:「そうなってくれるといいんですが、それほど簡単なものではないでしょう。というのも、G-SHOCKは常に新しいことに挑戦しないとブランド力が弱くなってしまう。次はこうだろう、と誰もが予想できる商品ばかりではダメなんです」
――そういえば、今年のBASELWORLDで伊部さんにインタビューさせていただいたのですが(参考:「とんでもないG-SHOCK」が来る!? - G-SHOCKを創り上げた伊部菊雄氏の挑戦、実現可能性は10%!?)、「とんてもなく非常識なことに挑戦している」と仰っていました。しかも、それは「相当な変人でないとやらないようなこと」だと。
増田氏:「今までの延長路線ではないことをやりたいと伊部が言うもので、予算を付けてプロジェクトとして進めてはいます。が、その成果が事業としてすぐにフィードバックされるというものではありません。あくまで、G-SHOCKの可能性への挑戦です。順当な進化だけでは、作るものがどんどん『普通』になってしまう。進化だけでなく、突然変異というか、意外性が必要なんです。
それに現在はスマートウオッチのようなものもありますから、お客様はちょっとやそっとじゃ驚いてくださらない。そこが難しいですね」
――時計であることを踏まえつつ、どこまで攻めていけるかですね。今日のスピーチに『常識にとらわれず本質を見つめる』という印象的な言葉がありましたが、時計の本質とはなにか、G-SHOCKの本質とはなにかを見極めることが大切、ということでしょうか。
増田氏:「そうですね。G-SHOCKはメタルになったり、コネクテッドエンジン3Wayのような新しいエンジンを積んだりと日々進化してきました。が、ひとつだけ変わっていない部分があります。それは『耐衝撃構造』です。これはG-SHOCKの核であると同時に、形状や材質をある程度規制してしまいます。つまり、構造が変わることで、今までにない大きな変化が生まれるかもしれない。
そこで、初号機モデル発売以来初めて、新しい耐衝撃構造の研究に着手しています。もちろん、G-SHOCKとしての性能を維持したままです。変えたことで性能が落ちてしまっては、意味がありませんから」
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なんと、G-SHOCKの核である伝統的な耐衝撃構造の変更の可能性、という衝撃的な内容まで飛び出した今回のインタビュー。成果の発表時期はまだ断言できないとのことだが、新しい耐衝撃構造は、一体どのようなG-SHOCKを我々に見せてくれるのだろうか。累計出荷1億本を超えてなお続く挑戦の数々と紡がれていくストーリーから、まだまだ目が離せそうにない。
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