省電力化で時計の質感が向上!?

標準電波もGPS衛星電波もBluetoothも既存のテクノロジーだ。が、それらのユニットをそのままセットしようとしても規定のモジュールサイズに収まらないことは容易に想像できる。

――実装では、どんな点に苦労しましたか?

小島氏「前回同様に、GPSアンテナと標準電波のアンテナは、干渉しないようなるべく離す必要があります。ただし、今回はBluetoothのアンテナもあるので、配置には苦労しました。加えてモーターが増えたことで、さらにスペースを使ってしまいます。ただでさえスペースが無い上に針軸の位置との兼ね合いもあるので、空いているところにポンと置くわけにもいきません。設計者は毎日CAD画面とにらめっこ。まるで、難解なパズルを解いているかのようでした。

左がConnected エンジン 3-wayのモジュール。モーターの数が増えているが、レイアウトにしっかり収まっている

問題解決の最大の鍵は、各ユニットを徹底的に小型化したことです。特に、GPS受信システムを省電力化できたのが大きかった。GPS受信ICのファームウェアを協力会社さんと共同で新開発、カシオ用に最適なカスタマイズをすることで、GPS受信システムの消費電力を約1/4に抑えられました。これにより、2次電池を小型化できたのです。また、GPSアンテナも材質に高誘電材を使用することで、従来の受信感度を保ったまま、体積比で20%の小型化に成功しました」

Connected エンジン 3-wayのモジュールと2次電池(左)、従来のGPSハイブリッド電波ソーラーのモジュールと2次電池(右)。小型化されているのがよくわかる

白い正方形がGPSアンテナ。左がConnected エンジン 3-wayのもの。こちらも一回り以上、小さくなっている

「レイアウトにも画期的なアイディアが生かされているんですよ」と小島氏は続ける。それは「積層構造」。基板を二層式に重ねることで、面だけでなく空間も有効利用しているという。

小島氏「ユニットを平面的にレイアウトすると、前述したパーツ位置の制限もあり、デッドスペースが生じていたんです。その点、積層構造では効率的にレイアウトできる。各受信アンテナも平面的に離すだけでなく、立体的に離すという選択肢が生まれます」

Connected エンジン 3-wayモジュールの構造

モジュールを積層構造にすることで、より効率的なレイアウトが可能に

さすがは、高密度実装技術を得意とするカシオ、といったところか。小島氏は続ける。

小島氏「省電力化技術でユニットを小型化して実装の問題をクリアしたのは事実ですが、省電力化には、実は別の目的もあるのです」

――他の目的とは?

小島氏「消費電力が減れば、発電量は少なくて済みます。つまり、ソーラーセルの上に配置した文字板の透明度を下げられるんですよ。濃い黒や白が使えるので、コントラストを高くでき、視認性も向上します。カラーバリエーションも増やせるし、立体的な時字(インデックス)も使いやすくなる。針も大きくできるなど、デザイン面でも可能性が広がります。

Connected エンジン 3-wayは、発電効率の良い遮光分散型ソーラーセルと省電力技術で、時計の精度だけでなく、デザインや質感も含めた総合的な価値を向上させているんですよ」

より深みのある黒い文字板を使用できるようになり、質感も向上した