変わりつつある皮膚がんの医療現場

皮膚医療の現場で「ダーモスコピー」と呼ばれる診断方法が注目されている。専用の拡大鏡で皮膚を観察し、病気を診断しやすくする手法だ。カシオ計算機が提供する医師向け学習サービス「CeMDS」は、ダーモスコピーをインターネットで学べるシステム。「地方の医師にとってメリットが大きい」と語る宮崎県の皮膚科医、外山望先生にお話をうかがった。

外山望先生は宮崎県日南市の開業医

皮膚がんと一口に言っても、危険性の低い基底細胞がんや、死亡率の高いメラノーマなど、実はいろいろな種類がある。これらは特徴も危険性も異なるので治療の仕方もまったく変わる。

さらにまったく無害なホクロでも、見た目が皮膚がんと似ている場合もあり、正確な診断には経過観察したり、専門の病院で病理検査しないと判断できないケースも多い。

ダーモスコピーは、こうした皮膚科の現状に風穴を開ける新しい診断方法だ。「ダーモスコープ(dermoscope)」と呼ばれる拡大鏡を利用して、患部を約10倍もの大きさに拡大して見ることで、皮膚がんなのか、皮膚がんに似ているだけの症状なのか見分けやすくする。基本的に拡大して観察するだけなので痛みや副作用の心配はなく、保険の適用で患者の自己負担額は数百円程度で済む。このため、医師にとっても患者にとっても気軽に試せるという特徴もある。

ただし、ダーモスコープは自動診断装置ではなく、あくまで医師の診察を補助するツール。早く正確な診断を下すには、医師がダーモスコピーという技術を習得し、経験を積んで熟練していく必要がある。

医者の卵や開業医の技術習得を効率よくアシスト

こうした背景の中で登場したのが、ダーモスコピー検査の技術を習得するための医師向けの学習用サービス、カシオ計算機の「CeMDS(CASIO e-Medical Data Support)」だ。日替わりの出題を解く「診断トレーニング」機能などを備え、少ない時間でも効率良く学べるよう工夫されている。

CeMDS(CASIO e-Medical Data Support)

CeMDSは、パソコンやスマートフォン、タブレットなど、インターネットに接続できる場所と端末があれば、どこでも利用できる。医師が多くいて情報交換もしやすい都心部でなくても、最新の情報が学べるという利点も持つ。

とはいえ、実際に地方の開業医が利用した場合、本当にスムーズに運用できるものなのか、運用していて使いづらい点はないのかなど、気になるところだ。今回ご協力いただいた外山先生は、昭和58年(1983年)に開業したベテラン医師。1日の来院患者は80人ほどで、大半の患者は自動車で通院し、片道40~50分圏内に住んでいるという。