エンジニアもデータも集うデータセンターを目指して
こうして、ユニットコムからミライネットに納入されることとなった富士通カスタムサーバ。このサーバが設置されるのは、大垣第2データセンター「ミライネットデータセンターパーク」だ。この省エネ型データセンターには、数々の最新技術が詰め込まれており、来訪した方にも好評だという。その設備と人気の秘密を伺ってみよう。
──「ミライネットデータセンターパーク」のコンセプトを教えてください。
山口氏:「ミライネットデータセンターパーク」は、"エンジニアもデータも集う場所"を目指して、着工したデータセンターです。サーバ管理を行うエンジニアの方にも働きやすい環境作りを重視しました。
──「ミライネットデータセンターパーク」の特徴を教えてください。
山口氏:実際にどのような取り組みを行ったかというと、一つは有機的なデザインです。エンジニアの方に、再びあのデータセンターで働きたいなと思っていただけるように設計しました。サーバルームは、サーバを安定して稼働させるため、サーバに合わせた環境になっています。窓もありませんし、温度も暑いか寒いかのどちらかになりがちです。このような過酷な労働条件ではエンジニアの方も疲弊してしまいますから、セキュアな有線接続などを利用して、できるだけサーバルームに入らなくても作業が可能なキッティングルームを作りました。
──データの安全性のため、どのような取り組みを行っていますか?
山口氏:昨今、頻発している地震への備えとして、耐震と免震の長所を使い分けた建築を行いました。自らの足で避難できる人間が勤める場所は耐震構造を、自ら逃げ出すことができないサーバが置かれた場所には免震設計を施し、建物の中央で渡り廊下によってジョイントするという構造を取り入れています。データの安全性とエンジニアの安全性の両方を実現できたかなと思います。
周辺環境を利用した省エネへの取り組み
──省エネ型データセンターと、従来のデータセンターとの違いを教えてください。
山口氏:データセンターは非常に大きな電力を必要とします。東京都では「環境に優しいデータセンター認定制度」というものがありまして、省エネに特化したデータセンターの利用を、補助金などを通じて推奨しています。データセンターではサーバにかかる電力は減らせませんから、サーバを冷やすための空調にかかる電気をどれだけ削れるかが、省エネのカギを握るわけです。
──「ミライネットデータセンターパーク」は、どのように消費電力を減らしているのでしょうか?
山口氏:例えば北海道のデータセンターでは、冷たい外気を空調に利用して省エネを実現しています。しかし岐阜県は非常に温度の上がりやすい土地柄ですので、外気は安定して利用できません。その代わり、大垣市にはどの季節でも温度が一定の地下水が豊富にあります。大垣第2データセンターではこれを空調に利用することで、一般的なエアコンでの空調に比べ、半分以下の電力を達成しているのです。さらに、この空調によって温度の上がった地下水はリフレッシュルームに送られ、エンジニアの方の疲労を癒す足湯として再利用しています。この足湯は、お客様からもぜひ浸かってみたいという要望があるほど好評を博しております。
佐藤氏:なお、通年では利用できませんが、外気も一部空調に利用しています。このあたりには「伊吹山」という山があり、夏以外は西北西の"いぶきおろし"と呼ばれる風が吹いてきます。大垣第2データセンターはこの風を取り入れやすい形状を採用しています。
山口氏:消費電力を総合的に見ると、一般的なデータセンターと省エネ型データセンターでは、1ラックあたり2世帯分の電力の違いが表れます。データセンター全体では、約600世帯分の差です。こういった省エネへの取り組みも、「ミライネットデータセンターパーク」の特徴といえるでしょう。
交通の要所として、光ファイバーと通信データも集う大垣市
──ほかに、大垣市にデータセンターを置いた理由はありますか?
山口氏:大垣市は、東京や大阪と比べると一地方都市といえるかもしれませんが、古くから交通の要衝として知られており、中山道、美濃路経由での東海道などが通っていました。現在でも名神高速道路やJRの新幹線があります。光ファイバーを中心としたネットワークは、交通網に沿う形で敷設されます。東名阪のちょうど中心に位置し、街道の多い大垣市は、各地とのネットワークが行きかう都市なのです。このデータセンターにも複数のキャリアさんの光ファイバーの中継局が置かれており、東京で何かあっても大阪から、大阪で何かあっても東京から抜けることができる冗長回線を保有しています。このようなネットワーク的なメリットも、弊社データセンターにはあります。