カメラ部とコントローラー部(液晶モニター)が合体分離し、「Outdoor Recorder」(アウトドアレコーダー)を冠するカシオのデジタルカメラ「EXILIM FR」シリーズ。そのレンズバリエーションとして、新たに登場したのが「EX-FR200」(以下、FR200)だ。VR写真・VR動画を撮影できる全天周カメラの狙いを開発スタッフに聞いた。
今回お話をうかがったのは、カシオ計算機 QV事業部の熊崎元基氏と高山喜博氏。熊崎氏はFR200のハードウェアを、高山氏は連携アプリケーションの開発を担当されている。
カメラが記憶を臨場感のないものにしてしまう
―― FR200の開発は、いつ頃から始まったのですか?
熊崎氏「FR100(20015年12月発売)を手がけていた段階で、すでに開発を始めていました」
―― 早い段階から、FR100のレンズバリエーションを発売することが計画されていたわけですね。それにしても、円周魚眼という、かなり特殊なレンズを採用されるとは思いませんでした。
高山氏「円周魚眼レンズを採用したのは、あくまで結果論なんです。
FR200の狙いは『その場の周囲全体を撮れる』こと。カシオが昔から目指している『撮るための煩わしさからユーザーを解放する』手段のひとつです。
写真を撮ることの煩わしさのひとつに、『ファインダーをのぞいて構図を考える』ことがあると思うんです。
その場の周囲全体を写して、その中から見たい部分を見ることができれば、ファインダーをのぞいて構図を考える必要も、カメラを構える必要すらなくなりますよね。その発想から、全天周をカバーする円周魚眼レンズの採用にたどり着きました」
熊崎氏「FRシリーズは、カシオのデジタルカメラ『EXILIM』シリーズの中で、『Outdoor Recorder』というジャンルの製品です。この視点からいうと、写真を撮る人にもっとアウトドアのレジャーやイベントを楽しんでほしいという思いが、FR200にはより強く込められています。
たとえば、家族なら、お父さんはどうしても写真担当になりがちじゃないですか。すると、写真ばかりに気を取られて、家族とのアウトドア体験を楽しめなくなってしまいますよね」
―― 確かに自分は写真に写れませんし、せっかく出かけたのに、本来の目的であるはずのアウトドアを楽しめたのかどうか疑問を感じることがあります。
高山氏「雄大な景色や感動的なシーンも、ファインダー越しにしか見られなかった……、そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。カメラが、その場の記憶を臨場感のないものにしてしまう。本末転倒ですよね」
―― FR200では、どんな撮り方を想定しているのですか?
熊崎氏「今までのカメラは、レンズを被写体に向けるのが当然でした。FR200は、レンズを上に向けて撮るという使い方ができます。こうすることで、周囲全体を写した全天周写真を撮れます。レンズの向きを変えることで、まったく違う写真になるんですね」