PCゲームのプレイを快適にするにはまずビデオカード(GPU)を強化するのが定石だが、出力する液晶のクオリティーでも快適度はかなり変化する。カジュアルゲーミングの域であれば、リフレッシュレート60Hzのごく一般的な液晶でも十分だが、オンラインゲームで勝ちを狙うなど、アクション性の高いゲームをやり込むという場合は、応答速度が短くリフレッシュレートが120Hz~144Hzの高速液晶がほしい。
昨年あたりから大手液晶メーカーがこぞってWQHDや4Kといった高解像度液晶に低遅延&高リフレッシュレートやディスプレイ同期技術(FreeSyncまたはG-SYNC)を組み合わせた製品を続々と発表している。今回はベンキューの27インチWQHD液晶「XL2730Z」に触れる機会が得られたので、早速チェックしてみたい。
まずはハードの設計をチェック
XL2730Zの特徴を短く表すなら「27インチWQHD、リフレッシュレート144Hz、ノングレアTNパネルでFreeSync対応」となる。実売8万円前後と値段もそこそこ張る(だが27インチWQHDの高付加価値ゲーミング液晶としては相場だろう)が、果たして価格に見合った満足感は得られるのだろうか。
全体のデザインは黒を基調にしたシャープなデザインに、所々赤を入れたいかにもゲーミングギア的なデザイン。組み立ては台座とスタンドを組み合わせ、液晶本体をはめ込むだけで終了する。ちなみに液晶とスタンドの固定はデル製液晶のようにツメをひっかけて固定するクイックリリース式だが、デル製のスタンドとは互換性はないので注意しよう。
XL2730Zのデザイン的なアクセントにもなっているスタンドは液晶の上下動や上下左右への首振り、そして液晶パネルの90°回転にも対応する。機構そのものは普通だが、スタンドの各部に目盛りと目印が刻まれている点に注目したい。誰かに適当に調整されても首振り角は何度、液晶位置は下から何センチの位置といった感じで的確に調整することが可能だ。 こうした機能は、ゲーム大会やLANパーティ等でも自分のセッティングを素早く出したいゲーマーに向けた配慮だろう。ちなみに専用のキャリング用カバー(ビニールシート製)も付属している。
映像入力はDisplayPort1.2a×1、デュアルリンクDVI×1、D-Sub15ピン×1にHDMI×2という構成。さらにHDMIは1系統がHDMI2.0対応、残りが1.4a対応となる。
ただしXL2730Zの売りであるWQHD解像度でリフレッシュレート144Hzを得るにはDisplayPort1.2a接続を使うか、HDMI2.0接続に限られる、という点に注意したい。デュアルリンクDVI&WQHDという組み合わせでは60Hzが上限となり、少々制約が厳しいようにも感じる。しかしWQHDで高リフレッシュレート144Hzに負けないフレームレートを出せるビデオカードを搭載すれば、自ずとXL2730Zの仕様に沿う映像出力が得られると考えればこの制約は妥当といえる。
入力はDisplayPort/DVI/D-Sub15ピンが各1系統にHDMIが2系統と接続機器を選ばない構成。左端のMini USBポートは専用コントローラを接続するためのものだ。一番左側にあるのはマイク入力端子で、これは本機左手のUSB3.0ハブへパススルーされる |
GeForce GTX 980とXL2730ZをHDMIケーブルで接続し、リフレッシュレート144Hz出力を確認 |
HDMIの信号はRGBの階調を各々16~235で表示するリミテッド設定が標準だが、PCを接続するなら0~255のすべてを表示するフルレンジ設定にした方が明暗がクッキリした映像が得られる |
XL2730ZはUSB3.0のハブ機能も搭載しており、液晶左側よりアクセス可能。左側面にはヘッドセット用にヘッドフォンとマイク端子も配置されており、いちいちPCの背面に回らずともヘッドセットの装着ができる。ただしヘッドフォン端子の上流はHDMIにしか接続されていないため、DisplayPort出力時には注意したい。
左側面には内蔵USBハブ機能から分岐したUSB3.0×2にヘッドフォン/マイク端子を配置。マイク端子は背面からパススルーされるが、ヘッドフォン端子はHDMIにのみ接続されるという点に注意。赤いボタン状の物体はワンプッシュで展開するヘッドフォンハンガーだ |
同社のXLシリーズといえば画質切り替えやOSDの操作が可能な専用コントローラ「S.Switch」が売りだが、XL2730Zでは丸形になった「S.Switch Arc」を採用。OSDのメニュー項目を操作するホイールやボタンのほかに、「1」~「3」までのプリセット呼び出しボタンを備える。後述するゲーム用の画質モードをここに登録しておけば、プレイ中にこれを押すだけで画質が瞬時に切り替わる。
その他のポイントとしては、AMDのディスプレイ同期技術「FreeSync」対応が挙げられる。NVIDIAの「G-SYNC」とは互換性がないため、Radeonユーザでしか生きない機能ではあるが、FreeSyncを効かせると最大リフレッシュレートが下がる製品が多いなか、144Hz出力が可能という点は注目すべきだろう。