近頃PCゲームの勢いが盛り返してきている。家庭用ゲーム機とのマルチプラットフォーム展開はもちろんだが、PC版はより画質オプションが高く設定できたり、ハードウェアのスペックを強化することでより高いフレームレートや解像度で快適に遊べるといったメリットがある。さらにModも追加すればゲームの世界観やシステムを思いのままに変更できるという奥深さもある。
ただ問題なのは、最近はゲームの推奨スペックがインフレ気味なこと。最低スペックはそれなりに低くても、推奨環境がGeForce GTX 970と現役準ハイエンドを指定するゲームもある。推奨未満のGeForce GTX 960やGeForce GTX 950でどの程度動くのか、その場合画面はどんな感じになるのか分からないから怖くて手が出せない、という人もいるだろう。
そこで今回は、現行GeForceシリーズを搭載したASUS製グラフィックスカードで、話題 & 人気のゲームがどの程度動き、どんな設定にすればプレイ可能になるのかをチェックしてみたい。これからゲーミングPCを買おう(組もう)と思っている人はもちろんだが、最新ゲームに合わせグラフィックスカードを買い換えようと考える人はぜひ参考にして欲しい。
今回準備したASUS製GeForce搭載グラフィックスカード7枚。GeForce GTX TITAN Xや補助電源なしのGeForce GTX 950等納期の都合で揃えられないものもあったが、現行ラインナップはほぼ網羅している |
最新ゲームで平均60fps以上を目指す
いきなりベンチマークに入る前に、現在のPCゲームの傾向を見つつ、今回テストで使用したゲームの紹介や特徴(描画システム的なもの)をチェックしてみよう。
傾向1:基本無料系のゲームは描画が軽い
プレイは無料で誰でも楽しめ、プラスアルファの要素に課金が発生するタイプのゲームは基本的に描画負荷が軽い。多くのプレイヤーを集めるためには当然の戦略ともいえるが、そのため基本無料系の軽量級ゲームは最新のGPUを必ずしも必要としない。設定を全部最低に落とせば、Core 2 Duo世代のマシンにほどほどのGPUさえ付いていれば動くことも多い。
今回は軽量系の代表として「World of Warships(以降WoWS)」を選択。画質を落とせばCore 2世代のマシンでも動く軽快なゲームだが、ぜひ画質を上げて海原を疾走する軍艦の姿を堪能して頂きたいものだ。
傾向2:有料の大作ゲームは推奨GPUのスペックがやたら高い
SteamやOrigin等で販売されている有料のゲームは軽いものから重いものまでさまざまあるが、こと話題作の場合はGPUの性能が全体に上がってきている分、それをフルに使って家庭用ゲーム機以上のグラフィックが堪能できるように設計されているものが珍しくなくなってきた。
こうしたゲームに共通するのは、推奨GPUがやたら高いことだ。2016年に登場した「Fallout 4」は最低環境こそGeForce GTX 550 Ti(2011年)と低いが、推奨環境はGeForce GTX 780と1世代前のハイエンドを指定。直近のヒット作「Tom Clancy's The Division(以降 The Division)」もGeForce GTX 560必須、GeForce GTX 970推奨となっている。
そこで「Fallout 4」と「The Division」も今回チェックリストに加えてみた。推奨環境以下のグラフィックスカードでどの程度違いが出るのかチェックしてみたい。
傾向3:ハードの性能をリアリティー向上に注ぎ込む
傾向2とやや被るが、最近の大作ゲーム(特に海外系)は実写のようなリアルな描写にかなりの力を注ぎ込んでいる。前述のThe Divisionだとリアルな天候表現や荒廃したニューヨークの街並みが見どころだが、レンズフレアや周辺の色収差、ビネット効果といった"リアルなカメラを通じて眺めているような効果"を付与している。
さらに「Rise of the Tomb Raider(以降RoTTR)」のように、サラサラ感のある髪の毛を表現するために物理演算をとり入れる例もある。
こうした描き込みのすごいゲームに共通しているのは、GPUだけでなくCPU負荷も半端ではないこと。ゲーム中はGPUはフル回転なのはもちろんだが、物理4コアのCore i5だと7~9割占有するゲームも珍しくないのだ。
また、今回は触れないが最高画質設定にするとVRAMの消費量がドンと増えるため、重量級ゲームを最高画質で攻めるには、4GBのVRAMでは足らなくなる(パフォーマンスが出なくなる)場合がある。GPUのパワーとVRAMの搭載量が、今後のグラフィックスカード選びのキーになることは間違いない。
今回はこれら4本のゲームが現行ASUS製グラフィックスカードでどの程度動くかチェックするが、同時に最低30fps以上、平均60fps以上出すにはどんな設定になるか、その時どんな画面になるかもチェックする。解像度は1920×1080ドット(フルHD)固定だ。用意したグラフィックスカードは記事の最後でまとめて紹介する。
検証のベースとなるPCの構成は以下の通りだ。Skylakeこと第6世代Coreの最速CPUを使うことで、CPUがボトルネックになりにくいよう配慮している。
今回のテスト環境 | |
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CPU | Intel Core i7-6700K(4GHz/最大4.2GHz) |
M/B | ASUS Z170-A(Intel Z170) |
メモリ | Crucial BLS2K8G4D240FSA(DDR4-2400、8GB×2) |
ストレージ | Crucial CT1000MX200SSD1(1TB SSD) |
電源ユニット | Corsair RM650(650W、80PLUS GOLD) |
OS | Windows 10 Pro 64bit |
ドライバ | GeForce GAME READY DRIVER 364.72 WHQL |
GPUのおおまかな性能をチェック
各ゲームの検証に入る前に、今回使用するグラフィックスカードの大まかな性能差を定番ベンチマーク「3DMark」でチェックしておこう。フルHDのゲーミング環境を想定した「Fire Strike」および4K環境を想定した「Fire Strike Ultra」のスコアを比較する。
型番の大きい方から小さくなるに従い、段々とスコアが小さくなっていくが、GeForce GTX 960とGeForce GTX 950のスコア差が比較的小さい反面、GeForce GTX 970とGeForce GTX 960、GeForce GTX 950とGeForce GTX 750 Tiのスコア差が大きくなっている点に注目してほしい。GeForce GTX 960はコスパが非常によいGPUとして知られているが、少し奮発してGeForce GTX 970にすると性能がグッと稼げることを意味している。
最新ゲームはもちろんのこと、HTC ViveやOculus RiftなどのVR HMDでもGeForce GTX 970が推奨GPUになっていることを考えると、GeForce GTX 970をファーストチョイスにするのはオススメだ。ただ、ASUS製のGTX 960や970では約2万円の価格差があるので、ひとまずはGTX 960や950で楽しみつつ、上位GPUへの乗り換えを考えるという選択でもよいだろう。