奇をてらわず、しかし、こだわりを持ったデザイン
―― アウトドアウオッチというジャンルはカシオとして実績があるがゆえに、PRO TREKとの棲み分けをどうユーザーに訴求するかなどの課題もまた出てくるかと思いますが。
今村氏「製品戦略からいえば、それはあるかもしれません。でも、とりあえず、そういうことは後々考えればいいじゃないかと。それより、お客さまがスマート(アウトドア)ウオッチを使うメリットを追求しようと開発を続けてきました。
そして、アウトドアにおけるスマートウオッチへのニーズを確信しました。そこに気付いてからは、当初の開発モデルとWSD-F10とは、開発思想が大きく変わりました」
―― そして形になったWSD-F10ですが、国内でのプレス向け先行内覧会では、外観のデザインが思ったより大人しいという意見も耳にしました。G-SHOCKのように先鋭的なデザインを期待していた記者もいたようです。
今村氏「これが最初の1歩である以上、やはりニュートラルな時計らしいデザインにすべきだろうと。時計メーカーであるカシオが手がけるのだから、『時計らしさ』もまた重要なキーワードだと思うんです。今回は尖ったデザインよりも、本物の質感やタッチパネルの操作性などを優先しました」
岡田氏「いくつかのデザイン候補がある中、最初のひとつを作るなら、より多くの方々に好き嫌いなく使っていただけるものをと考えて、現在のデザインに決まりました。液晶パネルの形が丸いのも、時計らしさを意識した結果です。ただ、将来的には、もっと色々なスタイルに挑戦していく必要もあるとは思っています」
―― 外観のデザインにおけるこだわりを教えてください。
今村氏「カシオはやはり時計メーカーですから、ガラスが傷付いたり、汚れたりするのを避けたいと真っ先に考えました。そのためには、ベゼル部分を一段高くしてガラスを保護してあげる必要があります。でも、そうすると、肝心の操作にとって邪魔になりかねません。
WSD-F10はOSにAndroid Wearを採用していて、その主な操作は、液晶モニター上で指を縦横に動かすというもの。ベゼルのかさが高いと、スワイプしたときに指が当たって不快なんです。そこで、縦(垂直)方向と横(水平)方向のベゼル内側を少しだけ寝かせて、指を逃げやすくしています」
―― あぁ、本当だ! よく見ないとわからない程度ながら、ベゼルの内側が縦方向と横方向にえぐれた形になっていますね。
岡田氏「試作ではもっと深くえぐったデザインもあったのですが、見た目がやや奇抜になってしまって。検討を繰り返して、このバランスに落ち着きました。これだけでも指の逃げやすさが違うんです。非常に細かなところですが、だからこそ『こだわり』といえるかもしれないですね」