20年以上、常に原点であり続けるXD-1500シリーズ

―― XD-1500シリーズでのもっとも大きな改善点は、やはりキーボードへの変更ですか。

XD-1500

大島氏「はい。インタフェースをペンタッチからキーボードに、コンテンツも当時No.1だった『ジーニアス』へと変更し、電子辞書ならではの機能として『ネイティブ発音』を搭載しました。

頻出単語6,000語のみでしたが、発音記号がわからないと読めなかった単語を、耳で聞いて学べることが特徴です。大学センター試験にリスニングが出ると言われ始めたころで、それも追い風になって年間で2~3万台を売り上げるヒット商品となりました」

―― 発声の仕組みや音声データを格納するのは、技術的にも大変だったのでは?

大島氏「半導体の価格がかなり高かったですからね。メモリーを節約すべく、エンジニアがオリジナルの音声圧縮技術を考え出してくれたんです。生音は圧縮をかけるとデータは小さくできますが、音質が悪くなるので、かなり繊細な調整を行っていましたね。例えば、人間の耳が聞きとれる周波数以外はすべてカットし、さらに音を間引く作業をする感じです」

―― 教育業界の動きや社会情勢もコンテンツづくりに大きく影響していたとか…。

大島氏「もちろんです! 例えば、(文科省)指導要領の変更は必ず反映しましたし、次はどんな流れが来るか、日夜考えていましたね。初期のころは高校生の皆さんに商品モニターもよくお願いしました。ちなみにXD-500は散々な評価でした(苦笑)」

―― その思い出からしたら、XD-1500は大躍進ですね!

大島氏「はい。電子辞書の市場では最後発のメーカーでしたから、そこでやっと一矢報えた感じです。ただ、高校生にはまだ届きませんでした。電子辞書は文字を大きく表示できるということで、シニア層の方々に好評だったんですね」

―― 女性ユーザーを意識したモデルもありますよね。

Sシリーズ

上田氏「はい。私が担当になった2001年のSシリーズからです。『質はいいけど見た目が…』、『もう少しかわいいデザインがいい』とのお声をもとに、初めて3色のカラバリを出したのが、3月発売の女性向けブランド『フロリス』でした。今でこそ普通ですが、当時は『ホントに出すの?』と何度も社内で確認されました(笑)」

―― デザインはどのような流れで決められたのですか。

上田氏「事前の打ち合わせでは、女性の好きそうな雑貨やきれいな化粧品を参考アイテムとして出しました。実は初めて担当した商品で思い入れも深くて。よくわからないなりに、女性に受けそうなデザインは何かと考え続けていましたね。ただ、一番は自分がかわいいと思うかでした。大島にもかなり話して説得したのですが、よく受けてくれたと思います。

大島氏「このモデルについては自分の感性を入れないようにしましたね。男女では目のつくりさえ違うんじゃないかと思うほど意見が合わなくて(苦笑)。実際、20年経った今でもピンクの扱いは難しいですから」