電卓史上初のキーボード
大平氏「まず、キーボードには『V字ギアリンク』という機構を採用しました。パソコンの高級キーボードに採用される『パンタグラフ式』といわれる構造の一種ですね。
その特許を持っているメーカーさんと、"究極のキータッチ"を求めて共同開発しました。これにより、キーが垂直に押下されるので、確実な"押した感"が得られます。
従来の電卓では、キーの下にゴムが入っています。キーの真ん中を押したときは垂直に凹みますが、中心からちょっとずれたところを押すと、"クニョ"っとキーが傾いて凹んでしまう。本格実務電卓もこのタイプです。
もちろん、入力は正確に行われるのですが、人間の心理としてちょっと一抹の不安を感じたりするじゃないですか。経理のプロの方は液晶画面ではなく伝票を見ながら高速に入力しますから、余計にそう感じます。この"見えない不安"を取り除きたかったんです」
宇都宮氏「キーが傾いて凹んでしまうと、キーの肩が穴の端に潜り込んで引っかかる可能性が出てきます。そこで、キーの高さを少し高くしてやり、潜り込みを防ぐんです。が、S100のキーは常に垂直に押下できるので、キーの高さを低くしています。これが打鍵のしやすさにもつながっています」
なお、V字ギアリンク構造の採用は、電卓史上初。かなりコストがかかっているらしい。大平氏いわく「こんなの、他社さんだったらまずやりませんよ(笑)。でも、カシオは本気ですから」
ひとつひとつのキーも、実は見どころが満載。エッジの効いた精悍で小気味よい成形が目を引く。形状は最下行だけかまぼこ形で、それ以外はすり鉢形状になっている。
これらは高速打鍵時の指の動きを考えた形状とのこと。すり鉢形のキーは押しやすく、かまぼこ形のキーは押しても弾いても使いやすい設計となっている。パソコンのキーボードで、スペースキーがかまぼこ形になっているのと同じだ。
キートップの文字は普通印刷されているが、S100は「C」、「AC」、数字、四則演算キー、「=」については、2色の樹脂でインサート成形されている。よって、頻繁に使用するキーの文字が摩耗して消えてしまうことがない。
大平氏「キーの文字も、実は悩んだところです。本格実務電卓では『M+』や『M-』、『MC』、『MR』などと略称で書かれているのですが、これを『MEMORY+』、『MEMORY-』、『MEMORY CLEAR』、『MEMORY RECALL』と、略さずに書いています。
というのも、ある調査の結果、一般向けの電卓ではメモリー関係のキー使用率が極端に低いことがわかったんです。これは略称が一因なのでは、と」
なるほど。しかし、それなら『TAX』キーも本格実務電卓のように『税込』と日本語で書いてくれた方がわかりやすいのではないか。
宇都宮氏「そこは、やはりS100の商品性を考えて英語にしています。先にお話しした"高級感"の演出ですね。デザイン的にも、英文字の方が緻密に見えるという側面もあります。S100にはそういう見栄えも重要なんです」
次回後編の話題は、液晶パネルや外装のこだわりへ。カシオ広報スタッフも初耳のエピソードも登場。お楽しみに。
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