訪日外国人旅行者には、グループとして環境整備を進める
村山氏:次に貴社としての取り組みについてお聞かせください。貴社は日本最大の流通グループのクレジット会社でいらっしゃいますが、現在、どのような課題があり、それにどのように取り組んでいらっしゃいますか。
水野氏:当社としては、グループ内のキャッシュレス比率の向上が重要な課題だと思っています。現在、イオングループでは、クレジットカードと電子マネー(WAON)をあわせたキャッシュレス構成比が50%を超えておりますが、この比率をさらに高めるべく、積極的に取り組んでいきたいと考えています。
キャッシュレス比率の向上には、先程の「再興戦略」にも記されているのですが、いわゆる「ビッグデータ」を有効活用することが必要であると思います。カードデータの分析は従前から進めてきましたが、カード会員へのDM(ダイレクトメール)や請求書の封入物を変える程度でした。今後、カードデータをマーケティングデータとしてさらに活かすためには、デジタルインフラの進化が鍵となります。スマートフォン、AI(人工知能)等を活用することで、お客さまが求める魅力あるサービスの実現が可能になると考えております。
村山氏:何度かお話に出てきましたが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催が近づいてきています。訪日される外国人旅行者に対して、貴社として取り組んでいること、あるいは取り組んでいかれることは何でしょうか。
水野氏:イオングループとしては、免税手続や英語対応など、訪日外国人が買い物をしやすい環境整備を進めています。当社におきましては、そのような買い物をサポートするため、銀聯対応端末の設置や海外発行ICカードが利用できるATMの整備を進めています。当社の国内ATM設置台数は約5,000台で、訪日外国人が多く来店される店舗への設置は完了済みです。
次に、当社は、海外拠点で現地のお客様にイオンカードを発行していますが、海外発行のカード会員様が日本で買い物をされることも多く、例えば、香港やタイのカード会員様が日本のイオン店舗で利用すればポイント優遇やキャッシュバックされる優待特典を提供するなど、海外イオンカード会員の日本への送客に関するインバウンド施策も実行しています。
村山氏:貴社グループは海外への事業展開もされているとお聞きしています。それがどのようなものなのか、今後の展開などについてお聞かせください。 水野:当グループでは1987年から海外事業を開始し、現在では、上場している香港、タイ、マレーシアをはじめアジア11ヶ国で、耐久消費財の個品割賦やクレジットカードの発行等を展開しております。今後もグループ店舗の出店にあわせて、展開地域を拡大していく計画です。
また、海外展開というところでは、最近、日系のクレジットカード会社や信用情報機関のアジアへの進出が見受けられるようになりました。当社としても日系企業の進出は歓迎するものでありますが、当協会も積極的に関わって欲しい。タイにノンバンクの団体はありますが、クレジットの団体ではなく、アジア全体でもクレジットを主体とした業界団体は見当たりません。日本クレジット協会も、日本だけの活動に留まらず、アジアという地域全体に視野を広げて活動することも必要になってくると考えております。
消費者に安全・安心・便利にクレジットを利用していただくために
村山氏:水野社長は、日本クレジット協会の副会長でもいらっしゃいますが、現在の業界の状況下、協会が果たすべき役割についてはどのようにお考えですか。
水野氏:割賦販売小委員会の議論においても、キャッシュレスに関する課題解決には、クレジット会社だけでなく、関係行政をはじめ、他業種との調整が必要であることを改めて認識しました。このたび、クレジット取引セキュリティ対策協議会の組成においては、日本クレジット協会が事務局となり業態横断的な場をまとめることができました。今後も各業界をまとめるためのリーダーシップを発揮し、消費者に安全・安心・便利にクレジットをご利用いただくために活動をしていくのが協会の役目だと思っております。
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