まさに圧巻の"デュアル水冷"モデル
外観以上に内部のインパクトは強烈だ。Core i7-5960Xと2枚のGTX 980は、マウスコンピューター独自の水冷システムで冷却される。CPUとGPUを両方水冷でカバーするので"デュアル水冷"とうたっているが、グラフィックスボードが2枚あるので実質トリプル水冷といっていいだろう。
この水冷システム自体はCorsairなどにもユニットを提供しているAsetek製のものだが、チューブの各所に水漏れなく簡単に着脱できる"クイックコネクト"というコネクタが配置されている点が独自の部分。このコネクタは水冷業界で"クイックリリース"と呼ばれれているもので特に新しい訳ではないが、Asetek製簡易水冷システムと組み合わせBTOマシンの標準装備にした、という点が非常に画期的なのだ。
チューブの各所に設けられた"クイックコネクト"で水冷ユニットを液漏れ最小限で分離できる。1000回程度の抜き差しには耐えられるそうだが、ユーザーがあえて抜く必要はないだろう |
ラジエータは背面に固定されている。肉厚だがファン口径が120mmなので冷却力は凄いという訳ではないが、空冷よりも安定した冷却力が得やすいうえ、水冷というロマンも味わえる |
ケース中央部分を占拠する2枚のGeForce GTX 980。マザーにはPCI-Expressの拡張スロットが合計6本あるが、上4本(2本のx1スロットを含む)は使えない |
ストレージは2TBのHDDが1基。全体のスペックに対しストレージがパワー負けしている印象だが、これはあくまで動作確認用ととらえるべきだろう(後述) |
これだけのものを備えているため、本機の静音性はあまり期待できない。正面40cm地点からのアイドル時のファンノイズは約48dBA(暗騒音は約35dBA)と、常にファンとポンプの音が聞こえている状態。稼働状態の本機と同じ部屋で寝るのはちょっとつらいところ。ただこのノイズはデュアル水冷の証、スペックの高さの証でもある。エンジンの排気音を楽しむような感じで使ってみたい。
それではもう少し内部に踏み込んでみよう。搭載CPU「Core i7-5960X」は、最大3.5GHzとクロックは控えめだが、物理コア数8、ハイパー・スレッディング対応で16スレッド動作可能な最強のCore i7。世間ではちょうど第6世代CoreことSkylake-Sが話題だが、Skylake-Sでも物理コア数は4基止まり。動画編集や3DCG作成などで重要になる並列処理においては、Skylake-S以上のポテンシャルを秘めている。
そして何より重要なのは、Core i7-5960XはCPUから出るPCI-Express 3.0のレーンが40レーンと多いこと。LGA115x系のCore i7ではCPU直結のレーンは16レーンしかないため、2枚のグラフィックスボードでマルチGPU構成にするのが限度。今話題のNVMe SSDを(速度の犠牲なしで)取り付けることはできない。
しかしCore i7-5960Xなら2枚のグラフィックスボードを載せても、さらにCPUに直結する8レーン分の信号が余るため、NVMe SSDを最高の状態で接続できる。より拡張に強いCPUなのだ。
「HWiNFO64」におけるシステム全体の情報一覧。8コア16スレッドのモンスターCPU「Core i7-5960X」に、クアッドチャネルDDR4など、普通のマシンでは見られない数値が満載 |
「ウィッチャー3 ワイルドハント」プレイ中のCPU占有率。このゲームはCPUを物理演算(画面左上に見えるPhysX>CPUの表記)に使うため、それなりに並列処理性能も必要となる |
拡張要素としてPCI-Express x16スロットが2本あるが、グラフィックスボード2枚を装着した状態で使えるのは一番下の1本のみ。PCI-Express 3.0 x8でCPUに直結しているので、今注目のNVMe SSDを組み込むのがオススメだ |
しかし、本機が標準搭載するストレージは2TBのHDD1基のみ。明らかにCPUとGPUに対しパワー負けしており、ゲームなどの起動ももったりとした感じになっている。
だがこれはコストダウンのため、というよりはユーザーが好みのSSDをBTOでチョイスするのが前提の設計と考えるべき。50万円近いマシンで下手に小容量のSSDでお茶を濁されても逆に困る。予算に少し余裕を持たせておき、BTOでSSDを追加、あるいは地力でSSDを追加するのが、本機のポテンシャルを最大限に活かすポイントなのだ。