全世界46カ国で公開され、各国の興収ランキングでトップを記録し、今、世界で最も観られている100年に1度の映像プロジェクト『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』。7月4日の日本公開を前にして、累計興行収入は既に『アナと雪の女王』、『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』を超えて全世界歴代トップ5入りを果たし、その勢いは歴代1位の『アバター』、同2位の『タイタニック』にも迫っている。
人類滅亡の危機を前に、アイアンマンをはじめとする“最強チーム”アベンジャーズの<愛>のための闘いを描いたアクション巨編の本作。物語の核となるのは、ロバート・ダウニー・Jr演じる、アイアンマンことトニー・スタークが人類の平和のために完成させた人工知能“ウルトロン”だ。しかし、人工知能による究極の平和維持システムとして開発されたはずのウルトロンがバグにより、本来の目的とは逆に暴走をしてしまう……という方向に物語は展開していく。そこで、今回は、人工知能の研究を専門で行っている東京大学大学院工学系研究科准教授の松尾豊氏に、人工知能の将来や、劇中に出ているバグによる暴走などについて話を伺った。
人工知能が世界を破滅することはあり得る!?
――今回の作品では、人工知能(AI)の暴走が話と中心となっていますが、そもそも人工知能(AI)というのはどういったものなのでしょうか。
人工知能とは、人間のような知能をコンピュータで実現するための技術です。特に、最近は、「ある目的を与えると、そのために適切に学習して動いていく」技術がめざましい進展をとげています。
――この作品内で描かれているAIについてはどのような印象をお持ちですか?
普段、映画自体はそこまで観る方ではないのですが、人工知能(AI)が関わっている映画は観るようにしているんです。この作品に描かれている世界観はおもしろいなと思いました。SF系の映画を観るときは、AI技術のみならず、その世界のなかの技術レベルの一貫性が割と気になるほうなんですが、今回の映画は割といろんなレベルのが混ざっていて、あえてそういう設定にしているのかなという感じのものもありました。
要するに、一般の人から見たときに想像しやすい象徴的なテクノロジーや近未来の世界観を重視しているのかなと。人々が今の時点で、「人工知能」と聞いて、イメージするものを素直に描いている感じですね。そういう意味では、人工知能に対して人々が「こういうイメージを持っているんだ」ということが分かり、興味深かったです。
――それは具体的にはどういった点でしょうか?
ウルトロンって明らかに悪そうですよね。まず声が低くて悪者の声をしているなって(笑)。もっと誠実な声でもいいはずなのにというのもありましたし。でも、世の中の人たちからしたら、AIとはこの映画のように、人間を滅ぼすとか、世界を破滅させるみたいな目的を、AI自身が意志として持ってしまう可能性があるものというふうに想像されがちなんだなと思いました。
――では、実際のAIはそういったことはあり得ないのでしょうか?
人間が悪い目的を設定してしまえば、AIがその目的に従って動作し、人に危害を加えることになってしまうことはあります。しかし、AIがそういった意志や目的を自ら持つことはあり得ません。そういう目的を自ら持つためには、基本的には進化的な生命性を持たなければならないんです。
自分が生き残りたいとか、子孫を残りたい、種を守りたいといった欲望がないと、世界を征服しようとかと思ったりすることはないんです。